【ネタバレ感想】「アキラとあきら」 著:池井戸潤(いけいど じゅん)【ネタバレpart3】

2022/09/13

カテゴリー:小説

banker

概要

このページは「アキラとあきら」のネタバレpart3となっております!まだpart1part2読んでいない方はそちらから読んでいただくことをお勧めします!

銀行員となった瑛と彬は研修で実力を見せつけます。彬は先輩の伴埜が無計画に融資を行ったせいで、取引先の社長が激怒した件をうまく丸め、解決へと導いたところでpart2は終わっています。

今回のpart3でネタバレは完結となるので是非最後までご覧ください!!

目次

クジラアタマの王様

登場人物

・山崎瑛(やまざき あきら)…小学5年生。

・ヤスさん…瑛の父の工場で働く従業員。

・階堂彬(かいどう あきら)…階堂家の跡取り。瑛と同い年。

・階堂龍馬(りょうま)…彬の弟。東海郵船の社員。

・階堂一磨(かずま)…彬の父。東海郵船の社長。

・小西(こにし)…東海郵船の常務。

・秋本(あきもと)…東海郵船の常務。小西の反対派閥。

・階堂晋(すすむ)…彬の叔父1。東海商会の社長。

・階堂崇(たかし)…彬の叔父2。東海観光の社長。

・紀田(きだ)…晋の親友で経営コンサルタント。

・水島カンナ…新しく東海郵船の担当になった産業中央銀行の職員。

井口ファクトリー

瑛は大学卒業後、銀行へ入り2年がたとうとしていました。瑛は井口ファクトリーの井口(いぐち)社長を訪ねます。

井口社長は瑛に追加で3000万を融資してくれないかと頼みます。これで借入金の合計は1億5千万円になり、少し借りすぎの領域まで足を踏み入れていました。

帰ろうとした瑛は机の上の白水銀行の通帳を見かけます。井口の娘の心臓の手術のための治療費をためているんだそう。

海外で手術する必要があり、場合によっては1億円ほどかかってしまうかもしれないそう。瑛は井口家と自分の過去を重ねて考えてしまっていました。

瑛の父も技術者で会社を経営していて、母が会社を手伝い、兄と妹がいるところまで一緒でした。

しばらくして瑛は井口に呼び出され、喫茶店に向かいます。井口によると、新規の取引が成立して利益が見込めそうだと彼は話します。

しかし、野村マシナリーという大口の取引先が破産申請をしたと井口は続けます。5000万の債権が残っていて、今回3000万の融資を受けれたとしてもうちは厳しいんだそう。

瑛は上司の不動(ふどう)に追加の融資をするよう説得しますが、不動はすでに担保の回収について考えているようです。

このままだと井口の娘の心臓の手術ができなくなると訴えかけますが、不動はそれを聞いて井口がほかの銀行に積立している預金を差し押さ得ようと考えます。

瑛は止めようとしますが、瑛は井口ファクトリーから担当を外されてしまいます。その日の夜9時、瑛は井口を訪ねて、白水銀行の預金を別に移すよう助言しに行きます。

井口はまさか銀行がそこまで手を付けたりしないだろうと考えていましたが、分かったと答えてくれました。

その後井口ファクトリーは倒産します。瑛は井口に助言をしたことから転勤することになります。

しばらくして井口の妻の由子(ゆうこ)からアメリカからの手紙が届きます。手紙には娘が治療を行うことができ、もう少しで退院できそうだと書かれていました。

瑛への感謝の言葉もつづられています。向こうのボランティア団体の中に瑛を知っている人がいたと書かれています。

それはなんとヤスさんで、教会で神父さんをしているそう。瑛が井口たちを救ってくれたことを知ると、ヤスさんは涙を流して喜んでいたと締めくくられていました。

余命1年

入社6年目となった彬に連絡が入り、彬の父が倒れたと母が知らせてきます。

打ち合わせの最中に倒れたと常務の小西が伝えてくれたんだそう。

午後に入ると、東海郵船の社員となっていた弟の龍馬からまた電話があり、少しまずいかもしれないと彼は言います。

担当医はくも膜下出血の方はとりあえず大丈夫だが、肺に多くのがんが転移していると話します。加えて、余命1年だと医師は宣告しました。

階堂晋は開業したばかりのリゾートホテルの業績が良くないことに頭を抱えていました。すでに広告費に莫大なお金をかけていて、手持ちのお金は残り僅かになっていました。

コンサルタントの紀田が据え置いた支配人、宮本(みやもと)は、価格設定が高すぎたかもしれないと理由を分析します。

日経平均株価は右肩下がりで、不景気となった今リゾートホテルの経営は厳しいものでした。

崇が経営する東海観光が企画した旅行パックの客がある程度ホテルに入ってくる予定でしたが、あまり売れ行きは良くないようです。

このままだと東海観光と商会共倒れになってしまうと晋が考えていたころ、兄一磨が倒れたと電話があります。

損することで得すること

一磨は倒れて2か月もたつと、強引に退院して激務をこなしていました。

常務の小西が社長に就任する方向で話が進んでいましたが、堅実派な小西常務が社長に昇格することに反対している派閥があり、反対派は弟龍馬を社長に据え置くつもりのようです。

どうやら龍馬が自ら社長に就任したいと言い出したようです。彬は実家へ帰り、まだ入社して数年なのに社長は無理だと直接言いますが、社外の人間は黙っていてくれと龍馬は聞く耳を持ちません。

父は龍馬には無理だと小西に社長になるよう説得しているようでしたが、役員同士のしがらみでやりたくないと答えているそう。

父は叔父たちについても言及し、彼らはプライドが高く間違ったと気づいても後戻りをしないと語ります。損することで得することもあるのになと彬に語ります。

一磨は見舞いの度衰弱していきました。話し合いの末、小西が新社長に就任することとなり、龍馬もしぶしぶ承諾していました。

新年が明けたころ、66歳という若さで一磨はこの世を去ります。東海郵船の顧問弁護士は遺言書があると親族を集めて、遺言を読み上げます。

遺言には東海郵船の株式を全て彬に譲与すると書かれていて、龍馬は東海郵船に関係ない彬が株を持つことに怒っています。

叔父たちのたくらみ

一磨が亡くなってから2年がたったころ、晋はホテル事業の赤字が5億を超えていました。

三友銀行へ追加の融資をお願いしに行きますが、むしろ今までの融資を返してほしいと言われてしまいます。

晋と崇は東海郵船からお金を借りることを考えつきます。そのためにも龍馬を社長にする必要があると晋は言いました。

実は以前龍馬が社長になりたいと言い出したのは、崇と晋が龍馬に吹き込んだからでした。

2人の叔父は、東海郵船の営業担当常務の秋本(あきもと)を説得し、取締役会で小西を辞めさせるよう提案します。

秋本は小西の社長就任を快く思っていない反対勢力の1人でした。

秋本は事前に根回しを行い、無理やり採決を行って、小西を解任させ新たに階堂龍馬を社長に就任させます。

ある日、取締役会が終わりに近づいた時、龍馬は東海商会に50億の連帯保証をしたいと提案します。

秋本の表情が曇り、ロイヤルマリン下田の経営状況を龍馬に尋ねますが、この事業は成功するの一点張りで、産業中央銀行には内緒にしておけばいいと説得します。

ロイヤルマリン下田は龍馬の連帯保証もあり、50億の運転資金を三友銀行から得て改装費用に当てますが、客足はいまだに伸びていません。

そんな中、紀田が買い取った土地の30億円のうち、マージンとして20%が紀田へと流れていたと判明します。

実際の土地の価格は10億ちょっとのようです。崇は紀田に電話を掛けますが、つながらないようです。

怪しいお金の動き

水島カンナは産業中央銀行に勤めていて、東海郵船の担当者でした。運転資金の需要があると呼び出され、試算表をカンナが見ていたところ、怪しいお金の動きがあります。

社長の龍馬と難波はごまかそうとしますが、ロイヤルマリン下田の50億の連帯保証をしたことがばれてしまいます。

カンナは彬に50億の連帯保証を龍馬が行ったことを知らせます。しばらくして彬の元へ母から電話があり、龍馬が入院することになったと知らされます。

極度の疲労のようで、龍馬は社長を降りたいと言っているそう。

役員たちはそろって彬に会社に戻ってきてくれないかと頭を下げます。彬は産業中央銀行へ辞表を出すことを決意します。

階堂彬が新社長として就任した初日、産業中央銀行へと融資の相談をしに行きます。

通された個室は親しみ深く、貸す側ではなく、借りる側として椅子に座っていることに不思議に思います。

やってきたカンナは新しい担当者を紹介します。やってきたのは山崎瑛でした。彬は試算表をこれまで粉飾していたことを謝罪し、挨拶を済ませます。

その後、ロイヤルマリン下田の現状を知るために晋叔父の所へ向かいます。晋叔父からロイヤルマリン下田の資料を貰いますが、不自然な所が多いようです。

翌日、資料の嘘を見抜き、本当の資料を持ってこさせると予想よりもひどい現状が判明します。このままだと東海グループはすべて共倒れになってしまうのでした。

ロイヤルマリン下田の売却

彬はロイヤルマリン下田を売却する方向で考えていました。売却価格はタダの代わりに、借金を全て引き受けてくれるなど条件を付けて瑛に頼みます。

ロイヤルマリン下田の借金は総額で140億円ありました。瑛たちはホテルを買ってくれそうな企業を探しますが、どこも興味なしの返答ばかりでした。

ここ数年で成長してきている能登島ホテルにアポを取り付け、話をしてみると少し考えてみると答えてくれました。

晋は三友銀行にロイヤルマリン下田を能登島ホテルが買ってくれるかもしれないと話をしていました。

三友銀行の担当者、江幡はもっと他にも良い売り手先があると、ロイヤルマリン下田の近くのサンヴィレッジ下田に交渉してみると答えます。

中央産業銀行に対抗心を燃やしているようです。ゴールドベルクという能登島ホテルの代理人という会社が瑛の所へ連絡を取ります。

やってきたゴールドベルクの代表は三原比呂志、ガシャポンなのでした。

実は能登島ホテルはサンヴィレッジ下田の買収を考えていて10か月前から打診をしていました。

能登島ホテルがライバルホテルのロイヤルマリン下田も買収しようとしていることを三友銀行から知ったサンヴィレッジ側は快く思っていないようです。

サンヴィレッジは伝統的なホテルで能登島ホテルが社風や伝統を大切にしてくれるかを不安に思っているようです。

ロイヤルマリン下田は高級リゾートとうたいながらも安売りで場をしのいでいて、従業員が納得しないとサンヴィレッジは答えます。

ほころび始めた会社

秋本本部長は大洋製紙が取引を中止したいと言ってきていると彬に伝えます。大洋製紙は祖父の代から取引があり、主要取引先の一つなのでした。

彬は会社がほころび始めてきていると感じます。取引を取られた会社を経理課長が尋ねますが、営業の秋本はどこに取られたかわからないと答えます。

彬は直接大洋製紙の社長に話を聞きに行きます。社長はあっさりと変更した取引先の社名を漏らします。

大洋製紙の社長は現場から苦情が絶えず、対応が悪かったから変えたと答えます。彬はただただ謝るしかできません。

彬は色々な取引先を巡りますが、どこも彬の危機感をあおるような返答ばかりでした。彬はこの負のループを抜け出すため、上層部の首を切ることを決意します。

秋本を呼び出し、営業部員がつけた日誌を突きつけます。そこには大洋製紙の荷物が崩れたことから再発防止案と共に謝罪を要求する文章が書かれていました。

どうやらクレームがあってから1か月放置していたようです。秋本の後任としてケーズフーズの北村を据えることを彬は漏らします。

黒字化

瑛は考えた結果ある提案を思いつき彬に相談します。それは東海商会をロイヤルマリン下田と共に売るという提案でした。

その提案を彬から聞いた晋はそれでも良いと了承します。崇は依然反対のようです。

ゴールドベルクのガシャポンは大日麦酒(だいにちビール)という買収先を探している会社を見つけ出します。

大日麦酒は東海商会だけなら50億で買うと答えてきました。

彬は産業中央銀行から140億の融資をうけ、三友銀行からロイヤルマリン下田への借金を全額返済し、東海商会を売却してロイヤルマリン下田を黒字化することを決意します。

そのためにも瑛に140億の融資を通すための稟議書を書いてもらうよう頼みます。

本来、三友銀行が金利を引き下げ、東海商会だけを売却することを承認するべきだと牧野は不満に思います。

結末

瑛は140億の融資の稟議を書き上げ、不動部長へ提出します。

稟議書の中には140億の融資を受けた東海郵船がロイヤルマリン下田に全額出資して、借金をすべて完済する代わりに東海商会、観光の株をすべて受け取ると書かれています。

晋と崇叔父はそのことに同意したようです。加えて東海郵船は大日麦酒に東海商会を売却し、受け取った50億を返済し、融資額は最終的に90億になるとのことでした。

この金額は融資の許容範囲内だと瑛は説明します。不動も良い稟議だったと承認の印を押してくれました。

瑛は亜衣を助手席に乗せ、後ろに2人の子供を乗せてドライブしています。階堂彬からロイヤルマリン下田への招待状が届き、家族で遊びに来ていたのでした。

銀行から融資を受けて2年目にロイヤルマリン下田は黒字化し、さらに成長していくようです。

瑛は実家のあった場所へ寄り道して、思い出にふけります。

まとめ感想

彬の2人の叔父たちは龍馬を騙して50億の連帯保証を東海郵船にさせます。そのせいで東海郵船は倒産の危機となりますが、彬と瑛は知恵を絞り、東海商会を売却することで窮地を脱出します。

晋と崇叔父も最終的に負けを認めて、会社を売りに出すことを認めました。彬の父とその兄弟である晋と崇、彬と弟龍馬など兄弟間のしがらみが良く表された作品となっていました!

瑛は作品中で、「金は人のために貸せ」という言葉を大事にしていると語っていました。皆が自分たちの利益ばかりを優先している中で、それを実行するのはかなり勇気がいりますよね。

読んでいて瑛の温かさが良く伝わってくる良い作品でした!

以上となります!当サイトでは他にも伊坂幸太郎さんの書かれた重力ピエロクジラアタマの王様などネタバレしてますのでそちらもご覧ください!SNSもフォローお願いします!

part2へ