泣けない魚たち-「泣けない魚たち」-著:阿部夏丸(あべ なつまる)- ネタバレ感想3

2022/01/28

カテゴリー:小説

海と子供

概要

こちらは「泣けない魚たち」のネタバレ感想のpart3となっております!

まだ前回のpart1,part2読んでいないよーという方は是非そちらからご覧ください‼

「泣けない魚たち」part1 「泣けない魚たち」part2

夏、こうすけと僕は色々な経験をして、こうすけの過去を僕は知ることができました。

part3では、ぼくとこうすけが力を合わせて、サツキマスを釣り上げようとします。

目次

泣けない魚たち

登場人物

・岩田こうすけ…転校生してきた小学6年生。1年留年している。背が高く色黒。

・さとる(ぼく)…主人公で、クラスで唯一こうすけと話せる。

・ゴジラ(先生)…こうすけとさとるの担任の先生。

幻の魚

学校終わりに僕は隠れ家へ向かいます。こうすけはもうすでにいて、今日はびっくりしたなと僕に話しかけます。

こうすけにサツキマスを知っているか聞くと、幻の魚でこうすけの住んでいた長良川にしかいないだろうなと言います。ダムのない川にしか住んでおらず、40~60㎝ほどあると言います。

ゴジラが矢作川にサツキマスが来ていると言っていたとこうすけに伝えると、飛び起き河童淵のほうへと走っていきました。こうすけを追いかけると、必死に川の中を覗いています。

ぼくの言葉に返事はなく、1人になりたいと悟った僕は先に帰りました。

次の日学校へ行くと、校門のところでゴジラに会いました。ゴジラは昨日の夜8時にこうすけが家に来て、サツキマスのことを聞きに来たよとニコニコして言います。

ゴジラは逆にサツキマスについて教えられたよと言います。ゴジラはこうすけが絶対に釣ると言っていたが、この川に数匹だから難しいよと言いました。

お昼休みに僕はこうすけと屋上で会います。学校で話をするのは初めてで、今日だけ特別でした。こうすけはサツキマスを釣る作戦を立てていました。

サツキマス釣りの仕掛け

こうすけは矢作川の地図を開き、ゴジラがサツキマスを見つけた場所が赤く記されていました。ダムの下には多くの赤い印がついていましたが、そこは禁漁区でなのでした。

しかし、下流に唯一赤い印の場所があり、そこは河童淵なのでした。サツキマスは上流に上る途中一度、河童淵で休んでから向かうんだそう。

こうすけは「はえなわ」という長い糸に10本ほど針を付け、夕方仕掛けて朝回収する仕掛けを試そうとしていると言います。僕は心配になり、ついていっていいか聞くと、こうすけは当たり前だと言ってくれました。

エサは生きたアユを使うんだそう。今日の夕方にアユを釣り、明日にはしかけ始める計画にしました。

次の日、ぼくたちは大急ぎで河童淵にきて、アユに針を掛けます。アユは手を離すと元気に泳いでいきました。2人は仕掛けを沈め、川から上がると流れの中に2つの空き瓶が浮かんでいました。

河童の手

それから一週間毎日仕掛けましたが、釣れたのはウナギ3匹とナマズ5匹、ナマズ6匹だけでした。それでも一番大きなナマズは70㎝あって、とても興奮しました。

今日も仕掛けを回収しに来ると、空き瓶がかなり動いていました。急いで回収しますが、糸を持ち上げると釣れたのはスッポンでした。

こうすけは初めて無理かもしれないと弱音を吐きます。「いつまでこんなこと続けてられるかな」と何かを隠している様子でした。

ぼくたちはいつものように別れ、別々に学校へ向かいます。

次の日の朝、ある事故が起こってしまいます。

大きな当たり

6時ごろに河童淵につくと、こうすけは珍しくいませんでした。川の中のウキを探しますが、なぜか見当たりません。不思議に思ってあたりを見渡すと、流れに逆らうように上流へ動いていました。

すぐに服を脱いで、川へウキを回収しに向かいます。すると、空き瓶は急転換して、河童淵の深場へと向かいます。もし深場に潜られたら、回収は難しくなってしまいます。

僕は必死に手を伸ばし、へその上まで水に浸ったとき、川の流れに足を取られ頭から水の中に倒れこみます。川の中は何者かの影が見えます。

その銀色の影は間違いなくサツキマスでした。その瞬間水をたくさん飲んでしまい意識が薄れていきます。すると、向こうから一匹の河童が現れます。

細い腕は僕の腕をつかみ、怖がる前に僕は意識を失いました。

突然の別れ

気が付くとそこは病院でした。お母さんは看護婦さんにありがとうございますと必死に頭を下げています。そこにはゴジラもいて、川でおぼれて、3日間眠っていたんだぞと教えてくれました。

ぼくが河童はどうしたのと聞きますが、ゴジラとお母さんはきょとんとしています。お母さんはお父さんに電話を掛けに出ていきました。

ゴジラに河童に助けられたんだというと、助けたのはこうすけだぞと言いました。ゴジラにここ1週間のことを話すと、それはきっとサツキマスだろうなと言ってくれました。

お母さんが帰ってきて、ゴジラも帰ろうとしますが、急に振り返り困った顔でこうすけが岐阜に帰ったよと言います。

おじいさんの退院が決まり、自分でおじいさんの世話をすると言って、帰ることを決めたそう。あまりにも突然の別れでした。

この話はこうすけがゴジラの家を訪ねたときに決まっていて、どうしてもぼくとの思い出を作るためにサツキマスを釣るんだと言っていたよとゴジラは言います。

ぼくは泣きそうになって布団をかぶります。いままでのこうすけとの思い出を振り返り、こうすけが「サツキマス一匹にこんなにムキになっているんだろう」と言っていた言葉の理由が分かった気がしました。

久しぶりのかくれが

2日後、僕は退院し、タクシーは天神橋を超えます。僕は運転手さんに止めてと言い、お母さんが止めるのも聞かず隠れ家のほうへ走っていきます。

かくれがは静かで手紙らしいものも置いていませんでした。隠れ家から僕たちの匂いが消えかかっているのがさみしく感じます。

手紙くらい置いていけばいいのにと小声で言い、生け簀の前まで来ると、なぜか生け簀に葉っぱでふたがされていました。ぼくはそっと葉っぱをどけると、そこにはサツキマスがいました。

間違いなく、溺れたときに見たやつで、60㎝はありました。決して暴れず、とても美しいうろこでした。「魚は泣くのだろうか」というゴジラの言葉を不意に思い出し、ぼくはボロボロと泣きます。

魚だって泣くよなと言いながら、僕は大声で泣きます。突然サツキマスが反転し、生け簀を飛び越えます。サツキマスは河童淵の深みに姿を消しました。

結末

10月を迎え、こうすけと別れてから1か月がたちました。学校の帰りに天神橋から川を見ると、直径5mほどの黒い塊がゆらゆら揺れています。それは産卵の時期を迎えたアユでした。

春にこうすけと出会ったときの若鮎がこんなに成長したかと思うと長かったような短かったような気持ちがしました。

しかし僕はさみしくありませんでした。ポケットの中にはこうすけから届いたはがきがあります。

ぼくはもう一度そのはがきを読みます。そこには6月になったら岐阜にきて、サツキマスを釣らせてやると書かれていました。

川では落ち鮎の群れがしぶきを上げています。産卵が始まるようです。

感想

以上で「泣けない魚たち」のお話は終了です。

僕はサツキマスを捕まえようとして、溺れて病院で目が覚めます。こうすけが助けてくれたようです。

こうすけはじいちゃんのところへ帰ってしまって、置き手紙を探して隠れ家に行くと、何とそこにはサツキマスがいました。

最後の盛り上がりがかなり爽快で、読んでいて楽しかったです。

一応「泣けない魚たち」にはもう一つ、「金さんの魚」というお話があります。

そちらも是非読んでみてください!下のリンクから飛べます!!

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