泣けない魚たち-「泣けない魚たち」-著:阿部夏丸(あべ なつまる)- ネタバレ感想2
2022/01/28
カテゴリー:小説
概要
このページは「泣けない魚たち」のネタバレpart2となっています。
まだ前回のpart1読んでいない方は是非そちらを先にご覧ください!!
こうすけの後を付けたぼくはこうすけの作った秘密の隠れ家を見つけます。
2人の秘密にしようとこうすけは言ってくれて、約束として木に☓印を付けました。
目次
泣けない魚たち
登場人物
・岩田こうすけ…転校生してきた小学6年生。1年留年している。背が高く色黒。
・さとる(ぼく)…主人公で、クラスで唯一こうすけと話せる。
・ゴジラ(先生)…こうすけとさとるの担任の先生。
見張り台の下で
それから2か月間、毎日のように僕たちは秘密の場所に通いました。部屋は1つから5つに増え、それぞれの部屋もありました。
こうすけは人使いが荒く、変に気を使わないのが逆に良いと僕は思いました。学校では相変わらず話をしませんでしたが、こうすけが望むのならそれでいいと思いました。
今は、ネムの木の枝に丸太を3本三角に縛り付け、平らな面を作って見張り台を作っていました。ぼくが見張り台を作りたいと言いだし、こうすけははじめ気が向かないようでしたが、協力してくれました。
2人だと多数決で決められないから、どちらかが我慢するしかないということに僕は気づきます。しかし作業しているうちにどちらも楽しくなってしまうのでした。
始めは気味が悪かった森も、今は学校より居心地がいいのでした。2人はおにぎりや缶詰を食べます。ここで食べれば何でもおいしいのでした。
1時間ほどかかって、ついに見張り台が完成し、2人は上に登ります。かなり遠くまで見渡すことができました。こうすけがアユの匂いがするといいましたが、ぼくにはわかりませんでした。
アユは年魚で、1年しか生きられないのがかわいそうだと僕が言うと、こうすけは「長く生きればいいってもんじゃないぜ」と笑って言いました。
誰を守れるのか
しばらく景色を見た後、どうして学校でしゃべらないのか、たくさん友達がいたほうが楽しいのにと僕がたずねます。
すると、こうすけは10人の友達より1人の友達が大事で、それよりも自分自身が大事なんだとじいちゃんに教わったと言います。僕はそれを否定しようとしましたが、できませんでした。
その1人の友達というのは僕のことだし、それがうれしく優越感を感じていたからでした。何人守るかより誰を守れるかが重要なのだとこうすけは真剣に言います。
ぼくは何も言えず、2人は川の音に耳を傾けます。こうすけはぼくにこの見張り台は何を見張るんだ?と聞きます。
一人ぼっちの金魚
夏休みになり、ぼくとこうすけは金魚屋の魚を釣ってしまうという泥棒の計画を立てていました。実はあきらが釣り堀で大きいコイを釣ったという自慢話をしていたのがきっかけなのでした。
その釣り堀には1m10㎝のコイの魚拓が張ってあったと言います。教室には誰も釣り堀に行った人はおらず、ぼくは一度でもいいからそんな大物を釣ってみたいと思いました。
それをかくれがでこうすけに言うと、田中金魚には大きなコイがうじゃうじゃいるぜと冗談か本気かわからない顔で言います。
店には池が10個ほどあって、その奥に大きな池がありました。こうすけは「もし」と念押しして、コイを釣るとしたらいつ忍び込む?と尋ねます。
僕は夜か朝早くだなと言います。裏は用水路で仕切られているからそこから忍び込めると付け加えます。今の時期、用水路はほとんど水が流れておらず簡単に這い上がれると思いました。
こうすけは、お前泥棒の才能あるぜと僕に笑いながら冷やかします。そうして2人は泥棒をすることに決めました。
盗み当日
次の日の午前4時にコンビニでこうすけと待合せました。2人とも無言で歩き、用水路へと着きます。予想通り5㎝程しか水はなく、そこから田中金魚の方向へと向かいます。
土手をよじ登ると、目の前に大きな池がありました。こうすけが見張りをして、ぼくが釣り糸を垂らします。すぐに魚がかかり、すごい引きで池の中に引きずり込まれそうになります。
その瞬間、糸が軽くなり逃げられてしまいました。もう一度糸を垂らしますが、またすぐに外れてしまいます。こうすけのクッションを付けて引いてみろよというアドバイスを受け、なんとか3回目で魚を釣ることができました。
ビニール袋に魚を入れ、こうすけがもう一回といいましたが、僕はもういいと言い、2人で用水路を走ります。
隠れ家の生けすに魚を放つと、それは30㎝程の大物の金魚でした。こうすけは金魚が中国から来たんだぜと教えてくれました。
こうすけにこの金魚をどうするのか聞かれ、河童淵に逃がすことを提案します。金魚も自然の川のほうが嬉しいだろうと思い、名案だと僕は思いましたが、こうすけは少し浮かない顔をしています。
その夜、僕は変な夢を見ます。自分が金魚になってしまい、河童淵を泳いでいました。水の流れがきつく、周りの魚がみんな僕を食べようとしています。
僕は必死に逃げますが、前に進まず、浅瀬で休んでいると、空からトンビに飲み込まれたところで目を覚まします。まだ午前4時でした。
僕は家を飛び出し、生け簀で金魚をバケツに入れると、必死で田中金魚を目指して走ります。
精霊流し
この夏休みは今までの中で一番遊んだ夏で、ぼくのお母さんはいい顔をしませんでした。妹のまさ子もずるいと言いますが、お父さんだけはあまり口を出さないのでぼくは好きでした。
まさ子は僕が日に焼けて河童みたいだと笑います。お父さんは河童というより漁師の子供だなと言います。こうすけのおじいさんも川漁師なのでした。
盆踊りの夜、こうすけと隠れ家で会いました。こうすけも祭りは好きで、前に住んでいた町では4日間徹夜で踊り狂っていたよと教えてくれました。
こうすけのじいちゃんもふんどしをしめて、張り切っていたと言います。その時にじいちゃんが川漁師で、カニや魚を取って売っていたと知ったのです。
それで、こうすけの泳ぎがうまいことや魚に詳しいことなど謎が解けた気がしました。じいちゃんは酒の飲みすぎで入院していて、親戚のおばさんの家に泊まっているといいます。
ぼくが両親はどうしたのかと聞くと、そんなものはいないとこうすけは言います。こうすけはじいちゃんについての話を続けます。
こうすけのじいちゃん
じいちゃんは町でも名人と呼ばれる一人で、毎日川を眺めることで今どんな魚がどこにいるのかわかるそう。こうすけも川漁師になりたいとじいちゃんに言ったようでしたが、もう川漁師が生きていける川はないと反対されたようです。
ある事件があって、じいちゃんは町の人から良く思われなくなったんだと言います。こうすけが生まれたころに、川の上流に紡績工場ができて、その排水で魚が大量死してしまったそう。
それで村の人は怒り、何度も話し合いの場が開かれました。実はその工場では村人が多く働いていて、村は工場閉鎖側と、存続側で分かれてしまったんだと言います。
じいちゃんはそれまでは優しい人柄だったそうですが、「川を殺すのなら俺はここで死んでやる」と工場へ怒鳴り込んで自分で腹を切ってしまったそうです。
じいちゃんは自分が死んで、川を守ろうとしましたが、工場側は事件が表ざたになったからお金は払わないと言いだし、村人たちもじいちゃんにやりすぎだと責め立てたんだそう。
それ以来、じいちゃんは誰とも口をきかなくなり、じいちゃんの仲間はどんどんいなくなってしまったとこうすけは話してくれました。
僕は映画の中のような話に言葉が出ません。こうすけが喋らないのもじいちゃんのせいかと聞きますが、それは関係ないとこうすけは言います。
こうすけは見張り台に上ると、ぼくを呼びます。登ると、矢作川に何百もの灯篭が流され、精霊流しが行われていました。灯篭はどこまでも連なっていました。
鳥の巣
夏休みが終わりに近づき、こうすけに宿題はやったのかぼくは尋ねます。こうすけは宿題の工作を一緒にしようと提案します。
こうすけはもう作るものを決めたようで、ぼくはこうすけの作業を見ていました。こうすけはどうやら、つるを使って何かを作るようです。
気が散るからあっちへ行ってと言われ、ぼくも何を作るか考えます。つるがたくさん生えていましたが、こうすけの真似をするのは嫌でした。
その時鳥が飛び立ち、巣でもあるのかと僕は思います。このとき鳥の巣を作ることをひらめきました。枝と枝を絡めるのは難しかったですが、次第になれてきて何とか鳥の巣のようになってきました。
こうすけの元へ行き、鳥の巣を見せるとほめてくれました。こうすけは石の斧を作っていました。僕は鳥の巣の次にいいねといい、2人で笑います。
ゴジラの呼び出し
学校が始まり、耕作の作品が後ろに並べられると、教室のみんなは鳥の巣と石の斧が一緒に作ったんじゃないのと疑われました。
1週間後、担任のゴジラはぼくとこうすけを理科室に呼び出しました。僕は何の話か緊張していましたが、ゴジラは2人の作品が欲しいと切り出しました。
僕は先生が欲しがってくれるのがうれしくて、いいよと返事をしました。こうすけも黙ってうなずきます。ゴジラは人間が地球に誕生して現在に至るまでの創造を表していると作品について語ります。
ぼくは全然わかりませんでした。しかし、嬉しそうに話すゴジラの顔はいつもとは違い、子供のようでした。こうすけはめんどくさそうにもういいだろと言って帰っていきました。
教室にはゴジラと僕が残され、ゴジラは僕にこうすけと仲がいいのか?と尋ねます。僕は何も言いませんでしたが、どうやらゴジラには僕らの関係がばれてしまったようでした。
ゴジラはこうすけについて話をしてくれました。
魚は泣けるか泣けないか
ゴジラはこうすけに両親がいなくて、おじいさんが入院したことで叔母さんの家に預けられているんだと言います。僕はどうして両親がいないのか聞きたかったですが、できませんでした。
こうすけが作った石の斧は強さの象徴で、ぼくの作った鳥の巣は愛の象徴なんだと言ってくれました。僕が謙遜すると、気づいていないだけだよとほめてくれます。
ぼくはおじいさんが良くなったら岐阜に帰っちゃうのかなとゴジラに聞きますが、ゴジラも分からないと言います。
プールの時間に僕たちが背中ばかり焼けているのを見て、ゴジラはぼくたちが夏休み中魚ばかり取っていたことを知っているようです。ゴジラは矢作川の魚を調べていると言います。
僕は身近に大好きな川の大好きな魚の研究をしている人がいて驚きました。ゴジラの目は魚の話をするこうすけの目に似ていました。
ゴジラは大学で「魚は泣けるか泣けないか」という研究をしていたと言います。僕は魚だって泣きたい時はあるんじゃないかというと、ゴジラはそれを証明、形で示す必要があると言います。
今のところ涙腺はないから泣いていないとされているが、涙はなくても泣いているかもしれないと、ゴジラは泣いていると信じているようでした。
こうすけにサツキマスが20年ぶりに矢作川にきていると伝えといてくれとゴジラは言います。僕は了承し、弾む気持ちで教室を後にしました。
感想
以上でpart2は終了となります。こうすけと僕は秘密の場所でたくさん遊んだようですね。
見張り台を作ったり、時には盗みをするなど少し悪いこともいろいろ経験をして、こうすけと仲良くなっていくのを感じました。
遊んでいく中で、こうすけのじいちゃんのことや、両親がいないことも明らかになりました。こうすけのじいちゃんは川が本当に大好きで、腹を切る決断をしたんだなと個人的に感じました。
ゴジラのような子供の心を持った大人の存在は、子供たちにとってかなり重要な存在だと思います。
そして最後にゴジラはサツキマスがきているとこうすけに伝えてくれと、ぼくに頼みます。
次のpart3では、ぼくとこうすけが力を合わせてサツキマスを釣ろうとします。とてもワクワクする展開なので是非ご覧ください!下のリンクから飛べます!!
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