【ネタバレ感想】家族ゲームpart4 著:本間洋平(ほんま ようへい) ネタバレ感想4
2022/01/16
カテゴリー:小説
概要
いよいよpart4で「家族ゲーム」のお話は終了となります。弟は成績を上げ、兄のぼくは自分のやりたいことを探しています。
いよいよ弟の受験となり、無事合格することができるのでしょうか。また、ぼくはやりたいことを見つけることができるのでしょうか。
まだ前回の3パートpart1~part3まで読んでいないよーという方は是非そちらもご覧ください。
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目次
家族ゲームpart4
登場人物
・沼田慎一(ぼく)…茂之の兄で、成績優秀だった高校2年生。
・沼田茂之…成績が悪かった中学3年生。慎一の弟で、家庭教師の吉本に教わる。
・父…小さな自動車工場を営む慎一と茂之の父。
・母…慎一と茂之の母親。
・吉本…茂之の新しい家庭教師。z大学で7年留年している
・土屋…茂之をいじめている同級生のいじめっ子。同じ団地に住む。
志望校変更
ぼくは今日も学校へ行かず、5日間休んでいました。目を覚ました時1日の繰り返しが自分に押し寄せ、それらを思い返すだけで起きれなくなってしまうのでした。
1度休んでしまうと、元の生活に戻るのにかなりの労力がいるのでした。弟はちゃんと学校へ行き、成績が上がったことで、同級生にあこがれの目を向けられていました。
いじめっ子たちはそれをねたみ、さらにいじめを加速させるのでした。ぼくがまた眠ろうとしていた時、家庭教師が入ってきます。
彼によると、ついに弟は志望校を変更しなかったようです。家庭教師と僕は一緒に学校へ行き、志望校を変更してもらうようお願いすることにしました。
ぼくは弟の担任の体育教師に会うのが嫌でしたが、家庭教師がどう彼に対応するのか興味があったのでついていくことにしました。
体育教師の担任
ぼくと家庭教師が訪ねてくることにきっと担任は嫌悪感を示すだろうと思いました。ぼくは最初挨拶だけして、あとは家庭教師に任せようと思いました。
学校の鏡に映るぼくの顔は世間から外れていく人造人間のように見えました。職員室の戸を開け、ストーブの前で担任を待ちます。
2人は悪目立ちし、チラチラ見られていますが、家庭教師は気にせず体を温めています。昼休みのチャイムが鳴り担任がやってきたので、後ろからぼくが声を掛けます。
家庭教師は沼田の親の代理なのですが、志望校を変更していただきたいと担任に言います。担任は怪しむ顔に変わり、委任状は持っているか聞きます。
委任状とは何か家庭教師が訪ねますが、担任は本人にも伝えたと言い、向こうを向いてしまいました。この不親切さは弟に対する態度と同じなのだろうと僕は思いました。
担任は言葉を強めて、なるべく本人か親が出すことになっていると言いました。ぼくは自分の時にはそんなものなかったと思い返し、わざと意地悪しているように思えてきました。
家庭教師はとりあえず本人を呼ぶよう担任にお願いすると、近くの生徒を呼び弟を呼ぶよう伝えました。
職員室でも平手
弟は何かを恐れているようにやってきます。家庭教師が弟に声を掛けると、弟は立ち止まり逃げ出します。
家庭教師が叫び、その声に周りの生徒は振り向きます。彼は周りを気にせず弟を追いかけ、弟は職員室の出口の手前で転びます。
すぐに捕まえ襟首を持つと、職員室のほうに連れ戻しました。弟は周りの目を気にして薄笑いを浮かべています。
家庭教師は弟を仰向けに倒し、顎を持ち上げます。弟は薄笑いを消し、諦めたように目を閉じます。その後は部屋での出来事が職員室で展開されました。
彼は高校も自分で決めず、喧嘩もできなくてどうなっているんだと言いながら、頬に平手を加えていきます。担任はその様子を時々眺めていました。
さらに弟を持ち上げ蹴りを加え、弟はかたくなに黙り続けています。だれも止めず誰も口出しせず、みんな驚き戸惑っているようでした。
家庭教師は弟を突き飛ばして、弟は逃げます。とりあえず決着はつき、周りの人も静かに動き出します。
担任は僕らの存在をやっと認めたように椅子を差し出し、顔には笑顔も浮かんでいます。「彼の成績を上げたのはあなたでしたか」とますます笑いを強めて手続きすることになりました。
家庭教師が後で親にも来させると言いますが、担任はあっさりしなくても大丈夫ですと答えました。帰り道、家庭教師は俺のやり方は間違っていたのかと独り言をつぶやいています。
バスに乗って、ぼくは家庭教師と弟の1年近い出来事を思い返していました。外側に出られないのは弟だけではなく、ぼくもだと思いました。
合格発表
また春になり、受験期になりました。家庭教師は学校へ行った日から怒ったり体罰もすることなく、冗談も言わないようになりました。
弟と家庭教師はテーブルをはさんで向き合い、ぼくはその光景を眺めています。弟はちらちら家庭教師のほうを薄笑いの顔で見ます。
弟はb高校に受かっていて、それをまだ報告していないのでした。家庭教師はそれを本人が口にするのを待っているようでした。
「ありがとうございました。これも吉本さんのおかげです。」という母の声が響きます。ついに合格のことさえ母に言わせてしまいました。
ぼくはこの緊張から解き放たれる気分で母を見て、弟も笑い顔でその声を聞きますが、家庭教師だけが首を傾げ放心したままの目を向けます。
母はこの異常な雰囲気に黙り、加えて「茂之が受かりまして」と付け加えました。彼はあっさりとそうですかといい、母に呼ばれて部屋を出ます。弟と僕も部屋を出ました。
おわかれ
そこにはすでに酔った父がいて、シャンパンを開けケーキを家族と家庭教師で食べます。しかし主役の家庭教師と弟はしゃべりません。
父は兄はだらしないけど、お前は立派だと弟に言い、弟は僕の顔を見ながら大声で笑います。ぼくと弟はいつも両親の天秤にかけられて観察されるのでした。
勉強が遅れ気味だという母の言葉をぼくは無視します。最近ぼくは母と口をきいていません。
弟の成績が上がったのはそれだけ弟に入り込めたことじゃないですか?とぼくは家庭教師に言いましたが、茂之君の都合の良いようにだけどねと苦笑します。
家庭教師はそれより自分のしたいことを早く見つけなよと僕にアドバイスし、はじめてぼくに笑顔を向けました。家庭教師は挨拶をして家を去っていきました。
2人の不登校
新学期が始まりましたが、ぼくは寝ていました。弟は新しい鞄を持ち毎朝出かけます。父は茂之を見習えと低い声で言い工場へ出かけていきます。
部屋の弟側には豪華な本棚と机が入れられ、この部屋はもはや弟の天下でした。以前までヘッドホンで聞いていた音楽も部屋に響かせ、母親もそれを注意しに来なくなりました。
ぼくは怠惰で役立たずなレッテルを貼られてしまいました。母親は部屋に入り、したいことがあるなら言いなさいと優しく言いますが、ぼくは何もないと答えます。
それなら勉強してA大学へ行きなさいと言います。ぼくは話が通じないと感じ、部屋を出ました。テレビを見ると、A大学の合格発表のシーンが写っていました。
母はこれをいつも見ていたのだろうかと僕は思います。いつものように父の怒声が遠くから聞こえます。
見ると弟に向かって怒鳴っていました。僕と同じく今日も学校へ行っていないようでした。休む前日、弟は唇が裂け、足を引きずっていました。
弟は暴行を受けたのでした。今回受けた傷は今までのよりもかなりひどいものでした。父は2人に怒鳴った後、うっぷんを母にぶつけて出ていきました。
母親は弟に行かない理由を聞くのではなく、家庭教師に申し訳ないでしょとせかしたてます。また吉本さんにお願いしようかなと母親はつぶやき、部屋を出ていってしまいました。
家庭教師との電話
母親は電話で家庭教師にお願いしているようでしたが、家庭教師は乗り気でない様子です。ぼくは聞いていられず着替え弟を見ると、薄笑いの顔を向けてきました。
ぼくは弟を無視して、電話口へ向かいます。母の受話器を取り上げ、家庭教師とぼくは話をします。
家庭教師の声は弱っていて、事情を聴くと家庭教師の母親が病気になり旅行へ行けていないと言います。いつか旅行へ行くときは一緒に行こうと僕を誘いますが、僕は断りました。
家庭教師は一時的に強制しても結局元に戻ってしまうんだよと言い、改善するためには環境自体を変えるしかないと言います。
電話をしながら母を見ると、なんとか家庭教師を説得してほしいという目をしていましたが、それを無視して部屋に戻ります。母は次に父親に電話しているようでした。
1時間くらいすると、玄関の下駄箱を蹴る音が聞こえ、父親が帰ってきました。仕事を途中で抜けてきたことにいら立っているようです。2人に怒鳴り散らしますが、弟は反応しません。
働かないなら工場で働けと、弟の首を持ち引きずります。母はそれを止めようとしますが、弟はa高校へ行くとどもりながら言いました。
母はせっかくb高校に入ったのにと止めますが、父親は落ちたら工場で働くことを条件に了承しました。父の了承さえ得られれば、母の考えは無視で1年間生活できるということを弟は知っていました。
結末
弟の一言で決着がつき、母はみんなが自分のことを無視すると嗚咽しています。父はそれを聞きながら出ていってしまいました。
母はぼくにお願いだから学校へ行ってほしいと縋り付きます。母の最期の希望はぼくだけなのでした。
弟は体を揺らしてコマを手の中で振り続けています。考えることをそれでごまかしているようでした。
ぼくはどうすればいいかわかりませんでしたが、母の嗚咽の声が自分を刺し続けています。
感想
以上でお話は完結となります。家庭教師の吉本はついに弟を変えることはできず、最終的に弟も不登校になってしまいました。
ぼくもしたいことを見つけるまで元の生活に戻ることは難しそうです。
中学を卒業していい高校へ行き、いい大学へ行くという理想の道筋に対して、どこまで子供が自分で決めるかというのはかなり難しいことですよね。
時には親の言うとおりにしておけばいいのかもしれませんが、自分で決めるということもやっぱり大切だと私は感じました。
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