【ネタバレ感想】「ワニとハブとひょうたん池で」「ナイフ」 著:重松清(しげまつ きよし)

2022/06/02

カテゴリー:小説

ワニ

概要

このページでは文庫本「ナイフ」に収録されたお話、「ワニとハブとひょうたん池で」と「ナイフ」のネタバレをしています!

どちらも中学生のいじめをテーマとした作品で、中学生の大人になりかけている難しい年代の心の変化が良く表されていました。

が子供のいじめに直面した時、どのように対応するのかも難しいですよね。

「ワニとハブとひょうたん池で」ではいじめられている中学生の女の子、「ナイフ」では息子がいじめられていると知ったお父さんが主人公のお話です。

目次

ワニとハブとひょうたん池で

登場人物

・あたし(ミキ)…私立の女子高に通う中学生。

・サエコ…ハブの首謀者。

・ホナミ…ミキの親友。

・おばさん…大泉公園のひょうたん池でワニに餌付けをしている。

・ジュリ…サエコの取り巻き1。

・ナナコ…サエコの取り巻き2。

・エツコ…サエコの取り巻き3。

ワニとハブ

あたし」の住む町にワニが住み着いたというニュースが流れます。家の近くのひょうたん池に隠れているんだそう。

ある朝、あたしが学校へ行くと友達たちから無視され、ハブられてしまいます。どうやら以前から仲の悪かったサエコが言い出し、クラス全員があたし、ミキをハブることにしたようです。

夏休みに入り、ずっと家にいたミキに差出人のない手紙が毎日届きます。内容はいじめで自殺した中学生や高校生の新聞記事でした。

お悔やみの封筒

8月に入り、通っている塾の子たちまでハブられるようになります。親友だと思っていたホナミが主導で始めたようです。

2学期に入ってもハブは続いていました。ある日学校から帰ると、母親から学校は楽しいか聞かれます。

ミキはごまかしますが、後ろから父親が入ってきて、お悔やみ用の封筒が家に届いたと怒りを抑えて言います。

最近クラスで香典(こうでん)ごっこが流行っているとごまかし、両親を追い出します。ミキは奴らの思うつぼだと絶対に自殺しないと心に決めます。

餌付けおばさん

ある日の塾の帰り、はじめてワニが住んでいるという大泉公園へ向かいます。池を覗いて帰ろうとすると少し離れたところにおばさんがたっていました。

彼女は人間の肉が好きになるようにワニに餌付けをしていると語ります。ミキは怖くなって走って帰りました。

ミキは時々池まで来て、ワニに餌を上げるおばさんと話をします。いじめられていることもおばさんに話しました。

おばさんはお肉に夫の髪の毛や爪を混ぜているといいます。おばさんの夫は不倫をしていて、不倫相手の女は気が強く電話を掛けてくるんだそう。

夫はばれていないと思っていて、それにいら立ち「ダンナを殺すつもりだ」とミキに語りました。

新しいハブ

ある朝、学校へ行くとホナミの席の周りに人だかりができていて、ミキはナナコに来るよう呼ばれます。

ホナミは先生に匿名の手紙を送り、いじめの内容をばらしていて、そのことがサエコたちにばれてしまったようです。

新たなハブはホナミにするから、ミキのハブは終わりだとサエコは言います。

ミキはサエコに「今夜大泉公園でホナミを締めちゃおう」と提案します。

ひょうたん池のワニ

放課後、ミキはホナミに一緒に帰ろうといい、ひょうたん池へ連れ出します。そこにはサエコたちが待ち構えていました。

ホナミは土下座をして謝っています。ミキは隣にいたジュリの頬をひっぱたきます。

ジュリがつかみかかってくるのを止め、サエコはホナミにミキを池に落とすよう命令します。そうすればハブるのを止めると約束しました。

ホナミが泣きながら近づいてきた時、サエコたちは悲鳴を上げて逃げ出します。池には2つの赤い点が光っていました。

結末

2年半がたち、ミキはエスカレーター式の進学をけって、都立高校へ進学しました。

ホナミは中3に上がった時にハブから解放され、代わりにサエコがハブられるようになります。

エツコと彼氏の取り合いになり、ジュリを味方につけクーデターを成功させたようです。サエコは拒食症になり、他の中学へ転校してしまったそう。

ナイフ

登場人物

・私…小柄な体形の会社員。

・妻…私の妻。真司のいじめに心を病んでいる。

・真司(しんじ)…サッカー部に所属する中学生。いじめを受けている。

息子のいじめ

妻は最近1人息子の真司(しんじ)の様子がおかしいと私に相談します。

サッカー部の練習に出かけた真司の部屋に入り、私は引き出しを開けてみます。消しゴムには人の名前が書かれ、カッターナイフでずたずたにされていました。

教科書は引きちぎられ、水につけられたり、女性器が落書きされたりしていました。

妻には黙っているようにいい、部屋を後にします。妻はその約束を守れず、いじめについて真司に聞いてしまいます。

会社から帰ってきた私は頬を赤黒く腫れさせた妻を見つけます。突然真司が殴りかかってきたんだそう。

それでも倒れた妻を見て、すぐに濡れタオルを持ってきてくれたと妻は語ります。

これで人を殺せるか?

1週間がたち、真司は毎日学校へ通っているようです。妻は何もしてくれない夫にいら立ちますが、親が首を突っ込むことは子供にとって屈辱的なことなんだと説明します。

妻はクラスの担任に相談しに行ったそうですが、教師が介入したせいで余計にひどくなるからと何もできないと説明をします。

さらに、サッカー部の1年生は逆に真司にいじめられているようだと担任の先生はいいました。妻は大粒の涙を流します。

飲み会の帰り、私は露店でナイフのキーホルダーを買います。「これで人を殺せるか?」と露店の外国人店主に聞くと、「タブンネ」と答え笑います。

ちゃちなナイフ

私は会社へ出勤するときもナイフを持ち歩き、トイレの個室や洗面所でナイフを引き出し突く練習をします。洗面所の鏡に映る私の顔は笑っています。

朝の電車でOLに靴を踏まれ、私はちゃんと謝るように睨みつけます。彼女の顔には怯えの色が走り、次の停車駅で降りていきました。

ナイフが私を違うものにさせるようでした。駅に着くと、駅前でたむろっている中学生がたくさんいました。

遺伝??

中学生たちは「二中のチビが学校の裏の川に入った」と笑っています。いじめられた1年生が復讐をしたんだそう。

私は叫びながら駆け出します。川の中には真司がパンツ姿でいました。私が名前を呼ぶと真司は川を這い上り自転車に乗って遠ざかっていきます。

駅前のロータリーに戻り、私はたむろっている中学生に近づきます。真司と同じクラスの二中は2人いて、どちらも中学生にしては大柄でした。

「くだらないことは止めろ」と私がいうと、中学生たちは私が真司の父親だと気づいたようです。「背が小さいのは遺伝ですか?」と中学生はけしかけ、私はナイフを取り出そうとします。

結末

家に帰ると真司が待っていて、正直に「何もできなかった」と真司に謝ります。

一緒に学校へ行こうと真司へ言い、ナイフの刃を引き出す動作をしますが、うまくいかずに自分の手を切ってしまいます。

真司は「かっこ悪いよ」と少し笑い、泣き出してしまいました。

翌日真司は1人で学校へ行くと、私へ言います。私はナイフを胸ポケットへしまい、会社へ向かいます。

まとめ感想

「ワニとハブとひょうたん池」では、ワニの住み着いた町でハブられた「ミキ」が主人公の物語です。ミキはハブに立ち向かい、自殺を選ぶことなく違う高校へと進学しました。

中学生にとってハブられる、仲間外れにされるというのはかなり辛い事だと思います。ハブられるくらいなら親友を裏切るという選択をしたホナミの気持ちも分かるような気がしました。

「ナイフ」では息子がいじめられていると知った父親の物語でした。自分の背の低さが息子に遺伝し、そのせいでいじめられているというのは何とも言えない気持ちになりますよね。

真司はいじめに負けることなく、毎日学校へ通うという選択をします。それを見て父親の私は少し頼もしく思えたのではないでしょうか。

以上となります!当サイトでは同じ重松清さんの作品、「エイジ」「みぞれ」もネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!