【ネタバレ感想】「吾輩は猫である(わがはいはねこである)」 著:夏目漱石(なつめ そうせき)【ネタバレ後編】

2022/08/03

カテゴリー:小説

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概要

このページは「吾輩は猫である」のネタバレ後編となっています!

まだ前編読んでいない方は是非そちらからご覧いただくことをオススメします!!

前編では苦沙弥先生の変わった友人、寒月・東風・迷亭が登場しました。

後編ではさらに変わった友人が登場し、苦沙弥先生自身の変わりっぷりも表されます。

目次

吾輩は猫である

登場人物

・吾輩(わがはい)…くしゃみ先生の家に住むネコ。

・苦沙弥(くしゃみ)先生…吾輩を飼っている主人。

・おさん…くしゃみ先生の家の下女。

・白君(しろくん)…向かいの家に住むネコ。

・三毛君(みけくん)…隣の家に住むネコ。

・車屋の黒(くろ)…乱暴者のネコ。

・寒月(かんげつ)…元くしゃみ先生の門下生。

・三毛子(みけこ)…琴のお師匠さんの飼っている猫。

・東風(とうふう)君…寒月君の友人。

・迷亭(めいてい)君…ほらばかり吹く苦沙弥先生の友人。

・細君(さいくん)…苦沙弥先生の奥さん。

・鼻子(金田夫人)…大きな鼻を持つ金田家の夫人。

・金田…向こう横丁の角屋敷の主人。

・鈴木君…苦沙弥先生の旧友。今度金田の旦那のお世話になることになった。

・多々良三平(たたら さんぺい)君…もともと苦沙弥先生の家の書生で、今は実業家の卵。

・雪江(ゆきえ)…苦沙弥先生の姪。

・古井武右衛門(ふるい ぶえもん)…苦沙弥先生の受け持つ生徒。よくいたずらをする。

屋敷への侵入

吾輩は金田の娘について一度見てみたいと思い、向こう横丁へと向かいます。主人の家よりも何倍も大きい家に吾輩は驚きます。

勝手口には車屋のかみさんがきていて、主人の噂話をしていました。主人が金田夫人の鼻が大きいと笑っていたと言いつけています。

大勢で主人の家の垣根のそばまで行って悪口を言ってやると計画しています。家の中に入ると、金田夫人とその夫の金田の旦那が話をしているのが聞こえます。

金田は主人の勤める学校にも知り合いがいるからちょっといじめてやろうと計画しています。

金田夫人は迷亭の叔父が男爵だということが嘘だと分かって怒っています。

十分な成果だと吾輩は主人の家に帰ります。急にきれいな所から汚い所へ移ったので、やはり教師より実業家のほうがえらいように感じました。

家には寒月君が来ています。向こう横丁の鼻がさっき来たんだよと主人がいいます。寒月君は鼻が来た理由を何となく察しています。

迷亭は「鼻の娘と結婚すれば子供まで鼻になってしまうとやめておけ」と助言しました。

鈴木君

しばらくたって吾輩はまた金田邸に忍び込みます。その日お客さんが来ていて、金田夫婦が話をしています。

どうやらその男は鈴木というようで、今度から金田の世話になる人のようです。

鈴木は昔主人、苦沙弥(くしゃみ)先生と下宿をしていて、顔も知れているので、話をしてみてくれと金田は言います。

吾輩も主人の家に戻り、しばらくして鈴木君が訪ねてきます。

10年ぶりの再会に話が弾みます。今度東京へ転勤となり、金田の世話になることになったというと、主人は金田の夫人の悪口を言います。

鈴木君は当人同士が望んでいるなら我々が邪魔してはいけないと主人に言います。主人は当人同士という言葉を聞いて、少し納得したようです。

主人は「今度寒月が来たら博士論文を書くよう言ってみる」と鈴木君にいいました。

泥棒

迷亭が家にやってきて、寒月が博士論文を書き始めたと伝えます。鈴木君は余計なことを迷亭に話すなと顎で合図しますが、主人は全く気づきません。

主人は迷亭に「金田の娘が寒月のところへ来たいと言っているそうだ」と伝えます。鈴木君は必死に目配せしますが意味がないようです。

吾輩は昼寝をしてしまい、目を覚ますと夜もだいぶ更けていました。雨戸が持ち上がる音がして誰かが中に入ったようです。

おそらく泥棒だと吾輩は予想します。主人夫婦を起こそうと布団を引っ張ったり鳴いたりしますが起きません。

鳴き声を聞いて寝室のほうへ泥棒がやってきます。その顔はなんと水島寒月君にそっくりでした。ただひげが生えていて別人だと気づきます。

主人は寝言で「寒月だ」と大きな声を出します。泥棒はゆっくり寝室へ入り、細君の枕元に置いてあったを持ち上げ満足そうです。

箱の中身は多々良三平(たたら さんぺい)君が帰省した時にもらった山の芋でした。そのほかにも着物や帯など盗んで満足そうに出ていきました。

初めての鼠取り

翌日勝手口で主人夫婦と巡査が対談しています。被害届を出すよう言われ、巡査は帰っていき、主人夫婦は被害届を書きます。

しばらくして玄関から多々良三平君がやってきます。もともとこの家の書生(下宿生のようなもの)で、今は実業家の卵なのでした。

泥棒に入られたことを細君がいうと、三平君は「猫は役に立たないからくれませんか?」と尋ねます。

主人が「やってもいいがどうするんだ」と聞くと、三平君は煮て食べますと答えました。

吾輩は役に立たないと言われ、鼠を捕ろうと決心します。台所で鼠が出るまで構えますが、音はするのになかなか姿を見せません。

夜になり、下女のおさんは昨日の泥棒に懲りて戸締りをしっかりします。主人もステッキを枕元に出しておけと細君にいいます。

台所の真ん中でじっとしていると、暗闇の中飛び出したものが吾輩の左耳に食いつきます。尻尾にかみつき投げ飛ばしてのしかかると反動で棚の上に飛んでいきました。

棚の上にとびかかると、棚の上の怪物は吾輩の額に向けて飛び降り、棚の上の物と共に下に落ち、ものすごい音を立てます。

主人は「泥棒!」と大きな声を出して飛び出してきました。

寒月君の研究

ある日、迷亭と主人が話をしているところへ寒月君がやってきます。主人が博士論文はどうなのかときくと、研究が複雑でなかなか時間がかかると言います。

「カエルの目玉の電動作用に対する紫外光線の影響」というテーマで研究していて、そのために丸いガラスの球を作っていると寒月君は言います。

少しいびつだと削ると、今度はこっちがいびつになってを繰り返して、朝から晩まで玉ばかり削っていると言います。この調子だと10年かかると寒月君は笑います。

話をしていると東風君もやってきて、主人の家に出入りする大体の変人が揃います。

寒月君は東風君に金田の令嬢を知っているかと聞くと、以前朗読会で知り合ってから仲良くしていると答えます。

話を聞くのが飽きた吾輩は庭へかまきりを探しに出かけます。他にも木登りや蝉取りなどして汗で体がムズムズします。

どうしようかと考え、主人がよく行っている銭湯というものに行こうと決心します。

初めての銭湯

銭湯についた吾輩は裏口から忍び込みます。中にいた人間が全て裸であることに吾輩は驚きます。

2つの湯舟があって、1つは薬湯という濁ったお湯でした。薬湯のほうは人が多く、人の中に湯が入っているようだと吾輩は思います。

よく見ると、その中に苦沙弥先生が真っ赤になってすくんでいます。せっかくの銭湯代2銭5里を活かそうとしているようでしたが、のぼせてしまうと少し吾輩は心配します。

しばらく人々を眺めていると大きい声を出すものがいます。よく見るとそれは紛れもなく苦沙弥先生なのでした。

主人は生意気な書生(下宿生)に対して、「自分の小桶にお湯が入るからもっと下がれ」と大人げなく喧嘩を始めたようです。

書生は元からここにいたのですと答え、主人は逆上します。書生はさっきから生意気なことを言っていたのでそれに腹を立てたようです。

吾輩は家に戻ると、すでに主人は夜ご飯を食べていて、のんきな猫だなぁと話しかけます。

落雲館との諍い

主人の家には垣根があって、その外側には5,6間の空き地があり、その奥に落雲館(らくうんかん)という私立の中学校がありました。

引っ越した当時、空き地には垣根がなく、落雲館の生徒が空き地で騒いでいました。主人は落雲館の校長に直談判して、垣根を付けてもらい、主人は安心しています。

垣根はできましたが、生徒たちは垣根を乗り越え、捕まりそうになったら垣根の中に逃げ込むことを繰り返しています。

学生にとって教師はからかうのにちょうどよく、月給で縛られているため辞職して殴られることはないと考えているようです。

ある日の午後、吾輩は虎になった夢を見ていると、突然飛び出してきた主人に横腹をけられます。

主人はそのまま落雲館のほうへかけていき、垣根を乗り越えた生徒を追って、自分も乗り越えようとすると教師が出てきます。よく注意しておきますと主人をなだめました。

翌日、落雲館ではお隣さんの迷惑について説教されているのが聞こえます。

授業が終わると、彼らは懲りずにベースボールを始め、ボールが落雲館と空き地の間の垣根をすり抜け主人の家の垣根にぶつかります。

彼らは球の位置を知っているようでしたが、主人を煽るためわざと騒ぎながら球を探しています。主人は飛び出して敵の一人を生け捕ります。

十数人の他の生徒も主人の家に入ってきて、お互い一言も発さずにらみ合っています。下女のおさんを落雲館に行かせて倫理の先生を連れてきます。

倫理の先生は下手に出て謝り、主人もこれからは表からきて断ってくれればボールをとっても良いと約束します。

金田の旦那

この次の日、吾輩が散歩していると金田の旦那と鈴木君が話しているのを聞きます。金田の旦那は落雲館の生徒に色々やらして、もうだいぶ弱ってきたと笑っています。

鈴木君に苦沙弥の様子を見てきてくれと頼んでいて、吾輩も急いで主人の家に戻ります。鈴木君は訪ねてきて、体調が悪そうだねと主人に切り込みます。

鈴木君が主人の様子を観察していると、表からボールを取らしてくださいと落雲館の生徒が入ってきました。

主人は今日で16回目だと鈴木君に漏らします。入れ替わりにヤギのようにひげを伸ばした八木独仙(やぎ どくせん)という男が訪ねてきます。

独仙と主人は昔の知り合いのようで、主人はかんしゃくを起こしてしまうことを相談すると、心の修業をして消極的に生きるしかないと言います。

1週間後、訪ねてきた迷亭に主人が「独仙に感化されて消極的な修養をしようと思ってる」と言うと、すぐ人の言うことを真に受けるとばかをみるぞと忠告を受けます。

玄関から頼みますという声がして、警視庁の刑事が以前主人の家に入った泥棒を連れて訪ねてきます。

泥棒のほうが刑事より顔ぶりが良いので、主人は泥棒の方へ丁寧にお辞儀をします。巡査が笑いながら明日午前9時までに署まで盗品を取りに来るようにいいます。

盗品は何だったかと刑事に聞かれ、主人は山の芋1箱と答えます。泥棒も笑いそうになり下を向いて着物の裾に顎を入れます。

迷亭も「山芋がよっぽど大事だと見える」と大声で笑います。刑事たちが帰った後、迷亭が泥棒にお辞儀をしたことをいじりますが、かたくなにそっちが刑事だったよと言い張ります。

吾輩の人間研究

次の日、細君に起こされて署へ出頭します。細君は娘たちを学校へ行くよう急かしますが、今日が祝日だと答えます。

細君も主人も祭日に気づかず学校へ欠勤届を出したようです。30分ばかりして、主人の姪で17、8歳ほどの女学生をしている雪江(ゆきえ)が訪ねてきます。

雪江が娘3人と細君と話をしていると主人が風呂敷を抱えて帰ってきます。

盗品を返してもらうついでに散歩してツボも買ってきたと言います。署の近くに吉原があってそこにも入ってみたそう。

雪江は教師の身で吉原に行ったことに呆れています。そこへ苦沙弥先生の学校の生徒が訪ねてきます。吾輩も人間研究のため主人についていきます。

面白い旦那を持ったことで短い猫の命の間に多くの経験ができてありがたいと吾輩は感謝します。訪ねてきた学生はかしこまっていて、古井武右衛門(ふるい ぶえもん)と名乗ります。

主人には訪ねてきた理由が全く分かりません。武右衛門はクラスではよく喋るほうでずっと黙ったままいるので主人は不審に思います。

話を聞くと、いたずらで金田の娘に恋文を送り、宛名として自分の名前を書いてしまったんだそう。

退学にならないように計らってほしいと泣きそうな声で主人に懇願しますが、あまり関係のない話に同情も薄く、ひたすら「そうさな」と繰り返しています。

武右衛門は普段主人を困らせて遊んでいることは忘れていて、先生なのだから助けてくれるだろうと信じているようです。

吾輩がこの状況を面白く思っていると、寒月君が訪ねてきます。寒月と主人が世間話をし始め、武右衛門は見込みがないと一礼をして無言のうちに帰っていきました。

寒月君は2、3日のうちに帰国する用事があるから会いに来たと言います。寒月と主人は散歩をしに出掛けます。茶の間では細君と雪江さんが遠慮のない声で笑っています。

結末

床の間で迷亭と独仙が囲碁を打っています。座敷の入り口には寒月君と東風君、そして主人が目の前に鰹節を並べて話をしています。

鰹節は寒月君のお土産のようです。迷亭は寒月君に球磨きはどうしたと聞くと、もう飽きたと答えます。寒月君はもう博士になる必要がないと笑い、国に帰った時、家に女房が待っていて結婚したとカミングアウトします。

金田の令嬢はどうするのかと聞かれ、黙っていれば十分ですと寒月君は答えます。結婚について議論をしていると多々良三平君が訪ねてきて、金田の令嬢を貰うことになりましたと言います。

寒月君に義理が悪いと心配しています。三平君はビールを持ってきて、主人・迷亭・東風・独仙・寒月の5人は乾杯をします。日が落ちてみんな帰ってしまいました。

愉快になれるのが羨ましくて、誰もいなくなった茶の間に残されたビールを吾輩は飲んでみます。初めは舌がピリピリして苦かったのに1杯飲み終わると苦も無く飲めるようになります。

2杯目を飲み終わると、顔がぼおっとして歌が歌いたくなり、愉快な気持ちになります。いい加減に足を運ばせているといつのまにか水の中にいました。

どうやら大きな甕の中に落ちたようです。飛び上がっても手が届かず溺れそうになります。どれだけもがいても手が届かないことに気づき、自ら求めて苦しむのはばかげていると吾輩は考え何も抵抗しないことにしました。

次第に楽になってきました。吾輩は死に、太平を得ます。

まとめ感想

吾輩は甕の中で溺れて死んでしまったようです。もがいて苦しむくらいなら抵抗しない所は苦沙弥先生と似ている所があるかもしれません。

物語の前半では苦沙弥先生のかんしゃくが良く表されています。吾輩は主人の愚かさを口にしながらも、そんな面白い主人に飼われてありがたいと感謝しています。

吾輩の人間観察を通して、苦沙弥先生やその友人たちの魅力が読んでいる側としても伝わり、感じることができた良い作品でした!

ぜひ書籍版の方もご覧になってみてください!!より登場人物たちの魅力を感じることができると思います!!

以上となります!当サイトでは他にも「解錠師」神去なあなあ日常などもネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!

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