【ネタバレ感想】「植物図鑑(しょくぶつずかん)」 著:有川浩(ありかわ ひろ)
2022/06/22
カテゴリー:小説
概要
このページでは、有川浩(ありかわ ひろ)さんの「植物図鑑(しょくぶつずかん)」のネタバレをしています!
主人公の「さやか」は家の前で行き倒れた「イツキ」と出会い、拾うことにします。
イツキは家の家事をしてくれたり、野草を一緒に取りに出かけたりして、次第にイツキのことを好きになっていきます。
しかし、イツキはさやかには言えない過去を抱えているようで、さやかには教えてくれません。苗字すらもさやかは知らず、、、
3代目の岩田剛典(いわた たかのり)さんと高畑充希(たかはた みつき)さん主演で映画化もされた有名な作品です!
是非最後までご覧ください!!
目次
植物図鑑
登場人物
・河野(こうの)さやか…家の前でイツキを拾ったOL。
・樹(イツキ)…さやかの家で家事をこなすイケメン。名前以外不明。
ヘクソカズラ
ある夏の日、部長はフェンスに生えている花を見て見事なものだと言います。「河野(こうの)さやか」はその花がヘクソカズラという花だと教えてあげます。
部長は君のような女性からそんな名前が出てくるとは思わなかったと驚いています。
さやかは花の名前を教えてもらった樹(いつき)を心の中で憎みました。イツキと出会ったのは自宅のマンションの玄関先でした。
はじめゴミ袋だと思っていたので、それが人間だと分かりさやかは驚きます。彼はおなかがすいて一歩も動けないと言います。
「よければ俺を拾ってくれませんか?」とその男は言います。まるで犬のようでさやかは笑い転げます。
さやかは彼を家に上げ、カップラーメンをごちそうしました。半年前に彼氏と別れたばかりで、残っていた彼氏の服を着せてあげました。
彼が風呂に入っている間に、さやかは疲れて寝てしまいました。
彼の名前
翌朝、さやかは布団の中に入っていました。自分で入った記憶はありません。
彼はみそ汁を作ってくれていて、とてもおいしくてさやかは涙を流してしまいます。
出ていく準備をする彼に、もし行く先がないならここで家事をしてほしいと提案します。彼は了承し、樹(イツキ)という名前を教えてくれました。
苗字は嫌いだから言わないそうです。2人は近くのスーパーへ行き、イツキのための服やバイトのための自転車を買います。
しばらく2人の生活は続き、あるとき庭の草むしりの話になります。その時、イツキがヘクソカズラという名前を教えてくれたのでした。
同居から一か月がたち、仕事のミスを連発し疲れて帰宅したさやかは、イツキのねぎらいの言葉で涙を流します。
1人で暮らしていた時は我慢できた辛さでも、誰かと一緒に暮らしていると涙もろくなってしまうのだなとさやかは気づきます。
それでも受け入れてくれる人がいる方が楽だとさやかは感じるのでした。
フキノトウ
イツキは近くのコンビニでバイトを見つけ、深夜働いていました。さやかはイツキのことを異性として意識していましたが、イツキは紳士的で意識していないようです。
夜はイツキはいないため、そういう雰囲気になることもありません。休日、イツキは散歩に行こうと誘ってきました。
近くの川につき、フキノトウを見つけてイツキはカメラで写真を撮ります。一眼レフの良いカメラのようです。
イツキはフキノトウを採ろうと提案しますが、さやかは犬のおしっこがかかってるかもと止めます。イツキは農薬とかよりもよっぽど健康的だとフキノトウを摘んでいます。
2人はフキノトウとつくしを持ち帰って、一緒に料理します。佃煮やてんぷらにして食べ、さやかはまた来週も連れて行ってと約束をしました。
給料日
イツキの給料が出て、初めに初期費用として出してくれた分をさやかに返します。イツキはずっとお金を出してくれたことを気にしてくれていたようです。
のこりで保険と年金を払うと彼は言います。さやかはひそかにどこかに住民票があるのだろうと推測しました。
また休日になって、セイヨウカラシナとノビルを採りに行きました。それでパスタを作って食べます。さやかはノビルの意外なおいしさに驚きます。
会社での昼休み、イツキが作ってくれたお弁当を食べていると、同僚の男性社員から美味しそうと言われフキの佃煮を取られてしまいます。
指を突っ込まれたフキの佃煮は食べる気がしなくて残してしまいます。さやかは怒りを押し殺してその場を去りました。
植物図鑑
時間つぶしに入った本屋さんで、さやかは植物図鑑のコーナーへ向かいます。一冊1800円とかなり高いものでしたが、さやかは2冊買って帰ります。
家に帰って、フキの佃煮を残したのをイツキに見られます。何とかごまかして、イツキはバイトに向かいました。
ベッドの中で図鑑を読んで、マットレスの隙間に図鑑を隠します。イツキに図鑑を買ったのをばれるのはなんとなく癪でした。
次の休みには花かんむりを作って、家に持ち帰ります。白い大きなお皿に水を張って水冠を漬けました。
さやかは図鑑で知った知識をイツキに話しますが、本の知識だけで夢をみたらがっかりするよとイツキに言われます。どうやら図鑑を隠していたのを見つけられたようです。
イツキに興味を持ってくれたようでうれしいと言われ、さやかは恥ずかしくなりました。
ブランド物のハンカチ
今度、ワラビを取りに行こうという話になりますが、場所が遠いためもう一台自転車がいるとイツキはいいます。
その夜さやかは自転車を買いに行き、次の休みにワラビを取りに出かけます。
ついでにイタドリもとって美味しく料理しました。意外にも有名なワラビよりイタドリのほうが味は美味しく感じました。
次の日の休みには川辺にクレソンを取りに行きます。クレソンを取っているとき、さやかは足を滑らせて、片足がずぶぬれになってしまいます。
イツキは持っていたハンカチで拭いてくれました。そのハンカチは有名なブランド物で、バイト先でもらったと言います。
靴もびしょぬれだったので、ハンカチを靴の中に入れて、濡れないようにしてくれました。
帰ってお風呂に入りながら、そのハンカチを送った相手がおそらく女だろうとさやかはいら立ちます。
飲み会
次の日の夜、眠れなくなったさやかはイツキのバイト先を覗きに行きます。バイト先には女子大生の女の子がいて、イツキにハンカチを使ってくれているかちょうど聞いていました。
イツキの名札には「日下部(くさかべ)」と書かれています。さやかは帰ると口を動かし、その場を去りました。
うしろから自転車でイツキは追いかけてきます。声は少しとがっていました。2人は口喧嘩をして、イツキは「自転車に乗って帰れ」とさやかに言い残しバイトに戻っていきました。
翌日、イツキに会わないように早く家を出ます。飲み会に誘われ、家に帰るのも気まずかったので、飲み会へ行くことにしました。一応留守電に遅くなるとメッセージを残します。
1次会は9時に終わって、帰ろうとすると同僚の竹沢が送っていくとついてきます。最寄り駅についてしまい、竹沢に帰るよう言っていると、後ろからイツキが現れます。
イツキの雰囲気は怖く、竹沢は帰っていきました。2人は言い合いをしながら帰り、アルコールのせいか、さやかは「イツキのことが好きだから嫌なのだ」と口を滑らせます。
それを聞いて、イツキも我慢していたと言います。家に帰って、イツキはさやかに強引にキスをします。その夜2人は一緒に寝ました。
イツキは前の彼氏よりもうまくて優しく感じました。
生け花展
次の日、さやかは腰のだるさを抱えながら仕事へ向かいます。玄関で見送ってくれる時、イツキは軽いキスをしてくれました。
ある日会社でもらった生け花展のチケットをイツキに見せて、行かないかと誘います。イツキはこういうのは興味ないけど、バイト先の奥さんに渡してみると言ってくれました。
夏に入って、2人は野草を取りに出かけます。ビニールハウスのおじさんにイツキは話しかけて、野草を取る許可を取りました。おじさんに気に入られて人参も無料でもらいます。
その日はヨモギを持って帰ってお茶にして飲みました。さやかの誕生日になり、イツキからは植物図鑑をプレゼントされました。
イツキの誕生日を尋ねますが、近づいたらまた教えると逃げられてしまいます。
封筒とノート
冬になり、いつものようにチャイムを鳴らしますが、家のドアが開きません。合いかぎを使って家に入ると、机の上に封筒とノート、そしてイツキに渡した合いかぎが置いてあります。
封筒の中には「ごめん、またいつか」の手紙が入っています。ノートにはこれまで作った料理のレシピが書いてあります。
布団の中でさやかは号泣します。合いかぎは2本渡していたので、1本はまだ持っていてくれているのかと希望を持ちます。
ノートに残されたレシピでさやかは料理を作り続けます。一緒に取りに行った野草を一人で取りに行き、料理を作りながら当時の思い出をさやかは思い出しています。
冬が終わり春が過ぎて、夏がやってきます。部長はフェンスに生えている花を見て見事なものだと言います。さやかはその花がヘクソカズラという花だと教えてあげました。
ある日、便箋が届き、「ごめん待たなくていい」という手紙と合いかぎが1本出てきます。久しぶりにさやかは涙を流しました。
結末
また冬がやってきて、家に茶色の書籍封筒が届きます。中にはポケット図鑑が入っていて、写真提供者の欄に日下部樹(くさかべ いつき)の名前がありました。
編集部に問い合わせて住所を聞いてやろうとドアの前につくと、ドアの前にはイツキが座っていました。
イツキによると、母校の大学で助手として使ってもらえることとなったと言います。以前さやかが貰ってきた、いけばな展の作家がイツキの父親でそこの長男なんだと語ります。
イツキは家を継ぐのが嫌で、母方の祖父母のところへ逃げていたと言います。最終的に相続権を放棄して今戻ってきたと言います。
あと10日で自分の誕生日だとさやかに教えてくれました。イツキは誕生日プレゼントとして「一緒に生きていきたい」とさやかに言います。2人はその後入籍します。
まとめ感想
さやかはイツキを拾って、苗字も知らないまま一緒に生活します。しかし突然イツキは姿を消してしまいます。
これまで2人でしてきたことを、さやかは1人でなぞっていきます。1年がたち冬となった時、イツキは帰ってきてくれました。
イツキが姿を消した後も、イツキとしたことをもう1度して料理を作り続けたのは、イツキのことを忘れないためかもしれません。
待ち続けたさやかの気持ちを考えると、胸がきゅっとするような思いになります。イツキが教えてくれた花を見るたび、もういない恋人の姿を思い出すのはかなりつらいことのように感じます。
とても季節感を感じる良い作品でした。書籍版の方も是非ご覧ください!より細かい心情描写を見ることができます!
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