斜陽(しゃよう) -著:太宰治(だざい おさむ)- ネタバレ感想後編
2022/03/03
カテゴリー:小説
概要
このページでは「斜陽」のネタバレ後編となります!!まだ前編読んでいない方はそちらを読んでから戻ることをお勧めします!
主人公の私、かず子はお母さまと山荘でのびのび暮らしていましたが、私が火事を起こしてからお母さまは弱っていきます。
さらには、2人の面倒を見てくれている和田の叔父さまによると、もう2人のお金が無くなってしまいました。
そこへ死んだと思われていた弟の直治が帰ってきますが、酒浸りで遊びまわっているため頼りになりそうにありません。
私やお母さま、そして直治はどうしていくのでしょうか。
目次
ストーリー
登場人物
・お母さま…私、かず子の母親。
・直治(なおじ)…かず子の弟。戦争で徴用されて以来、行方不明。
・私(かず子)…お母さまの娘で、直治の妹。
・和田の叔父さま…お母さまの兄。私とお母さまのお世話をしてくれている。
・西山さんのお嫁さん…40くらいのおばさん。私の住む家の前に住む村人。
・細田…妻子持ちなのに、かず子と恋仲だった男。
・山木…かず子が嫁入りした男。
・上原二郎…直治の小説の師匠。
お母さまの高熱
私は上原に3回手紙を送り、私のことをどう思っているのかと書きましたが、返事はありませんでした。
上京して、直接上原に気持ちを聞こうと準備をし始めたころ、お母さまが39度の熱を出します。
次の日の朝、37度に下がり村の先生に来てもらいましたが、心配いらないと診断しました。しかし一週間たっても熱は下がらず、夕方にはいつも39度の熱が出ました。
村医者は心配いらないの一点張りで、普通の風邪だと診断しました。直治も10日近く帰っておらず、和田の叔父さまに手紙を送りました。
発熱して10日たってやっと、村医者はやってきて、左肺に浸潤を起こしていると言います。しばらくしたら治るので安静にするようにとアドバイスを与えました。
私はそれに少しホッとします。和田の叔父さまは手紙を受けて、以前天皇に仕えて医者をしていた老先生が東京からよこしてくれました。
老先生の診断
老先生は亡くなった父とも交流があり、お母さまは大変喜びます。老先生とお母さまは世間話を続けていて、私はそれを見てほっとします。
老先生はお母さまが大丈夫だと診断しますが、後で私にこそっとお母さまが結核だと伝えました。もう手の付けようがないと老先生は言います。
お母さまは午後以外は元気そうで、きっと大丈夫なのだと思い込みました。
やがて10月になりますが、お母さまは夕方になると38度と39度の間の熱を行ったり来たりしていました。
ある朝、お母さまの手のむくみを見て、見ていられなくて涙を流します。
直治に手が晴れていることを伝えると、もう死期が近いとめそめそと泣き出します。翌日、手の晴れは余計ひどくなり、ミカンのジュースも口が荒れて飲めないと言います。
容態の急変
お昼過ぎ、直治が老先生と2人の看護師を連れてやってきます。いつも陽気な老先生もその時は怒っていて、注射をしてくれました。
その後、看護師を一人置いていき、直治は看護師と老先生を宿へと送っていきました。戻ってきた直治の顔は泣きそうで、今日、明日持つか分からないそうだと涙を流します。
私はかえって落ち着いて、電報を打たなくていいかと聞きますが、直治によると私たちはもう貧乏で人を呼ぶ力はないと叔父さんは言っていたといいます。
直治は叔父さまに頼るのはまっぴらだそう。その時、老先生の看護師さんが2人を呼びます。
女の蛇
2人がそばに行くと、お母さまは蛇の夢を見たといいます。続けて縁側に女の蛇がいるでしょうといい、私が縁側に出ると蛇が太陽の光を浴びていました。
その蛇を見て初めて、諦めの心が私にわいてきました。お母さまは起き上がる力もなく、食事ものどを通らないようでした。
翌日のお昼過ぎ、和田の叔父さまが駆けつけてくれました。お母さまは叔父さまの顔を見て涙を流さずに泣きます。
お母さまは直治を呼び、お母さまは私と直治を指さし、叔父さまのほうを向くと両手を合わせました。叔父さまはわかったよと言い、安心したように目をつぶります。
私も直治もひどく嗚咽しました。そこへ老先生がやってきて、お母さまは早く楽にしてくれとお願いします。老先生と叔父さまは目に涙を浮かべます。
叔父さまは今日中に帰る用事があると言い、お金を渡して帰ります。老先生もしばらく大丈夫だろうと一緒に帰っていきました。
お母さまは私を見て、忙しかったでしょうと親しげな笑顔で言います。私がいいえと答え、にっこり笑います。それがお母さまとの最後の会話になりました。
3時間くらいして、たった2人の肉親に見守られながら、お母さまは亡くなりました。お母さまの顔は生きているときよりなまめかしく見えました。
上京
叔父さまたちのお世話で葬儀を行い、直治と私は2人で暮らしました。直治はお母さまの宝石を持ちだし、東京で飲み疲れ、家でふらふら帰ってくるという生活をしていました。
ある時、ダンサー風の女性を連れてきて、気まずそうにしているので、私は東京へ行ってくるから留守番をしてほしいと私は上原に会いに上京しました。
直治から大体の住所を聞いていて、待ちゆく人に住所を聞いたりして、やっと上原二郎と書かれた表札にたどりつきます。
上原さんと尋ねると、中から何の悪意も警戒もない女の人が出てきます。上原は飲みに出ていると言い、私の切れた鼻緒を直してくれました。
主人は昨日もおとといも帰ってこないとのんきに笑っています。私は将来敵になるかもしれない相手に嫌になり、礼を言って外へ出ます。
奥さんに教えてもらったおでん屋に行くと、違うお店にいるよと教えられます。さらにそのお店ではさっき帰ったところでまた違うお店にいると言われます。
やっとそのお店に着くと、たばこの煙の中に10人くらいの人間が酒盛りをしていて、私より若いくらいの女の子も3人いて、たばこを吸い酒を飲んでいます。
その中には変わりてた姿の上原がいました。
上原との再会
顔は黄色くむくみ、目がただれ前歯が抜け落ちた老猿が上原なのでした。上原は私を見ると、顎で上がれと合図します。
私と上原は乾杯し、「ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ」とでたらめな歌で酒を流し込みます。
1人出ていくと、1人入ってきて、上原はいろんな人から助言を求められています。私はそっと立って、隣の部屋へ行き、お手洗いに向かいます。
すると、先ほど上原と乾杯していた一番きれいで若いチエちゃんという女の人とおなかがすいてないかと笑いながら訪ねてきます。
私は遠慮しますが、おかみさんも食事することを勧めてくれて、うどんを用意してくれました。3人はお酒も用意してくれて、黙って3人で飲みます。
チエちゃんがおかみさんに直さんは知らないかと尋ねますが、おかみさんは知らないと答えます。いつも上原と一緒だったのに何かあったのかと心配そうにしています。
私は微笑んで、自分が直治の姉だと名乗ります。チエちゃんは顔を見て気づいていたようでした。そこへうどんがやってきて、私はうどんをすすります。
上原はおかみさんに1万円を渡し、それだけあればどれだけ楽に暮らせるだろうと思います。何かこの人たちは間違っていて、こうでもしなければ生きていけないんだと思いました。
その夜
上原は私に泊まるところがないんだろと言います。雑魚寝ができるかと私に聞く上原に、おかみさんはかわいそうだと口をはさみます。
私は上原の態度から、この人は私のことを好きだと察します。上原は私を福井さんのところへ送っていくと言って、肩を抱き、ピッタリ寄り添って夜の街を歩きます。
手紙を読んだかと聞くと、上原は僕の赤ちゃんが欲しいのかいと尋ねてきます。私は何も答えず、上原は乱暴にキスをします。私は涙を流します。
上原は惚れちゃったと笑いますが、私は笑うことができませんでした。福井さんという家はみんな寝ているようでしたが、上原は扉をたたき、一晩止めてくれと頼み2階に上がります。
ここで寝たらいいと言って、上原は階段を下りていきました。私は布団に入り、疲れてすぐ寝てしまいます。
いつの間にか隣に上原がいて、私は1時間近く無言の抵抗をしますがかわいそうになって諦めました。上原はお母さまが死ぬ直前の匂いと同じにおいがしました。
夜が明け、上原にキスをして私は今幸せだと言います。その朝に直治は自殺していました。
直治の遺書
直治の遺書にはなぜ生きているのかわからないと書かれていました。遊んでいても少しも楽しくなくて、ママの愛情から死ぬことができなかったそう。
加えて、一つ秘密にしていたことがあると書かれていました。それはある中年の洋画家の奥さんに恋をしたということでした。
それからというものの、その奥さんに会うために、その洋画家の家に遊びに行くようになったそうです。
その洋画家は遊ぶための金が欲しいだけで、適当に絵を描いているだけだったので、直治は芯から軽蔑していました。
直治はいろいろな女と遊んだけれど、1人にしか恋ができないのだと気づいただけでした。
僕がダンサーを連れて家に来た時死のうと思ってはいませんでしたが、ちょうど姉がいなくなり、この家で死のうと決意したのでした。
結末
直治の死の後始末をした後、一か月間その家で暮らします。そして最後の手紙を上原に送ります。
その手紙には、私に子供ができて幸福なのだと書きました。そして、上原へのあるお願いが手紙に付け加えられています。
それは、生まれたこの子を上原の奥様に抱かせて、彼女に「この子は直治がある女の人に内緒で産ませた子だ」と私に言わせてほしいという内容でした。
まとめ感想
お母さまは亡くなり、私は上原に会いに行き、上原は私に惚れてしまいます。その日直治は自殺し、その遺書の中にはある女の人に恋をしていたのだと書かれていました。
直治が言っている中年の洋画家とは上原のことで、その奥さんに恋をしてしまったようです。直治は上原のことは真から軽蔑していたようですね。
最後の手紙に書かれていた奥様に自分の子を抱かせて、それは直治の子だと伝えるというのは、私、かず子なりに直治の無念を晴らしたいという気持ちがあったのではないかと思いました。
以上で「斜陽」のお話は終了です。実際の書籍のほうは200ページとそれほど多くないため、是非ご覧になってみてください!!
他にも小説ネタバレしてるので、そちらもご覧ください。SNSのフォローもお願いします。