斜陽(しゃよう) -著:太宰治(だざい おさむ)- ネタバレ感想前編

2022/03/03

カテゴリー:小説

sunset

概要

こちらのページでは斜陽のネタバレ感想を紹介しております!!

太宰治の描いた作品で、今でも課題図書などで読まれることの多い作品です。

舞台は戦争が終わったころの日本で、没落していく貴族の家族が描かれています。

何のために生きているのか悩んでいる登場人物が多く、酒におぼれたり、女の人に溺れたりして皆生きる目的を探しているのが伝わってくると思います!!

ネタバレは前編・後編に分かれているので、ぜひこちらのページの前編が面白ければ、後編のほうも読んでみてください!!

目次

ストーリー

登場人物

・お母さま…私、かず子の母親。

・直治(なおじ)…かず子の弟。戦争で徴用されて以来、行方不明。

・私(かず子)…お母さまの娘で、直治の妹。

・和田の叔父さま…お母さまの兄。私とお母さまのお世話をしてくれている。

・お咲さん…村で一軒の宿屋のおかみさん。

・西山さんのお嫁さん…40くらいのおばさん。私の住む家の前に住む村人。

・細田…妻子持ちなのに、かず子と恋仲だった男。

・山木…かず子が嫁入りした男。

・上原二郎…直治の小説の師匠。

かすかな叫び声

お母さまは食堂でスープをすすって、「あ」とかすかな叫び声を上げます。スープのすすり方は上品で、ひらりひらりと本物の貴族のように私、かず子には思えました。

私の弟、直治(なおじ)は大学の途中で徴兵されて以来、消息が不明で、お母さまはスープを飲みながら直治を思って、かすかな叫び声をあげているのでした。

4、5日前、近所の子供たちが蛇の卵を見つけてきて、もしそれがマムシなら庭に降りられないと思い、私はその卵を焼いてしまいます。

実はそれがただの蛇の卵で、その現場をお母さまに見られてしまいます。私の父が亡くなった際、枕元に蛇がいたり、庭の木という木に蛇が巻き付いていたことからお母さまは蛇を恐れていました。

私はお母さまは不吉なことが起こらないか心配していました。

そうして今日庭で蛇を見つけ、それが卵の母親じゃないかとうっかりお母さまに言ってしまいます。お母さまはため息をつき、かわいそうにと沈んだ声で言います。

引っ越し

今の伊豆の山荘に引っ越してきたのは、日本が無条件降伏した年の12月のことでした。

それまで東京の西方町に住んでいて、私の父を亡くしてからお母さまの唯一の肉親である和田の叔父さまがお世話してくれていました。

しかし、戦争が終わり、叔父さまが家を売って女中にも暇を出し、田舎で暮らしたほうがいいと言われ、その通りに引っ越してきたのでした。

お母さまはどんな家か見ずにそこへ引っ越すことに決めました。引っ越しの準備をした夜、お母さまはかず子がいなかったら私は死んだほうがいいのだとひどく泣きます。

私はお金が無くなるということはなんと惨めなことだろうと初めて気づきます。

平穏な暮らし

汽車に乗り、山荘の玄関につくと、お母さまは一瞬嬉しそうな顔つきになります。私ももし直治が帰ってきても別に窮屈ではないと嬉しく思います。

あたりが暗くなってきた頃、お母さまは39度の熱を出します。叔父さまが村の先生を連れてきて、肺炎になるかもしれないと診断を出します。

ただ、心配はいらないと頼りないことを言って、注射をして帰っていきました。叔父さまは何かあったら連絡するようにと言い、お金を渡しかえってしまいます。

次の日強い注射をしてくれ、お母さまの熱は37度に下がっていました。2人であの医者は名医だと笑いあいます。

引っ越してきた12月から4月まで2人は平穏に暮らします。私とお母さまは畑づくりの計画もしていますが、それでもお母さまはスープをすすって直治を思い、「あ」とかすかに叫びます。

火事

蛇の卵のことがあってから10日ほどたって、私が火事を起こしかけます。

夜、お手洗いに起きた私はお風呂場のほうが明るいのを見つけます。裸足で外に出てみると、お風呂のそばに置いておいた薪の山が激しく燃えていました。

急いで庭続きの下の農家の家の扉をたたき、寝ていたようでしたが来てもらいました。2人でバケツに水を汲んでかけますが、全く消えません

下のほうから火事を見つけた人たちが駆けつけてくれて、4、5人の村人たちが数分で火を消してくれました。良かったと思った瞬間、その火事の原因が昨日の自分の火の不始末だと気づきます。

近所の西山さんのお嫁さんが周りの人に火の不始末だよと大声で話しているのが聞こえます。

同情とお𠮟り

村長さんや警察巡査、消防団員の方がきて、やさしい笑顔で理由を尋ねます。私が正直に話すと、警察巡査の方は慰めてくれて、役所に届けないことにしてくれました。

警察に連れていかれて、罪人にされると思っていた私は安心します。下の農家の中井さんや近所の人たちもよかったよかったと帰っていきました。

その後夜明けまでお母さまに会いたくなくて、片付けなどします。夜が明けて、お母さまのところへ行くと、疲れ切ったように腰かけていて、笑顔を向けてくれました。

お母さまも私を慰めてくれました。次の朝、村で一軒の宿屋のおかみさんであるお咲さんが尋ねてきます。彼女は目に涙を浮かべそれまでの経緯を尋ねてきました。

私は村の人たちにどんなお詫びをしたらいいかお咲さんに尋ね、お金を包んで一人で一軒一軒回ったほうがいいと教えてくれました。

それから近所の家を周り、同情され慰められます。ただ、西山さんのお嫁さんだけからは、もし風が強ければ村全体が焼けたんだぞと厳しく叱られました。

私は本当にその通りだと痛感しました。反省して、翌日から畑仕事に尽力することにしました。

直治の消息

火事があって以来、お母さまは日に日に弱っていきました。そんなお母さまが実は直治が生きているのだと私に伝えます。

5、6日前に和田の叔父さまが連絡があり、もうすぐ帰還するが、ひどいアヘン中毒になっているそう。直治は高校の時に麻薬中毒にかかり、薬屋から高額の借金をしていたのでした。

お母さまは2年かけてそれを返していたのでした。叔父さまはそんな中毒者を働かせるわけにもいかず、しばらく私たちのところで療養させようと思っていると言いました。

さらに叔父さまは、私たちのお金がすっかり無くなってしまって、かず子をお嫁入りさせるか、どこかに女中として働かせるかしてほしいと言っているそう。

私は嫌だと強く拒否し、お母さまは直治のほうが可愛いのだろうと責めました。お母さまは「かず子‼」と厳しく言い、怒りに震えています。

私は行くところがあるのだといい、部屋のベッドで泣きじゃくります。

おじさまの言いつけ

夕方になりお母さまが部屋に入ってきます。叔父さまに私たちのことは私たちに任せてほしいと手紙を書き、はじめて叔父さまの言いつけに背いたとかすかに笑います。

行くところがあるというのは細田さま?とお母さまは聞きます。私は以前、山木という家にお嫁に行っていて、その後実家に帰ってきていたのでした。

お母さまは、山木からかず子が実は細田と恋仲だったことを聞いていて、細田は妻子持ちなのでした。

私は細田さまのところじゃないと否定し、思っている人がいるのだと言います。お母さまはそれが良い実を結んでくれたらいいねと言ってくれて、仲直りしました。

直治の帰還

10日ほど前に直治は帰ってきました。帰ってきてすぐお咲さんのところへ行って焼酎を飲みに行ってしまいます。

直治は文学の師匠に会いに行くと言い、お母さまから二千円もらい東京へ行ってしまいました。それから10日が過ぎても帰って来ず、小説家の上原さんと遊びまわっているようでした。

私は2階へ行き、今度直治の部屋になる予定の部屋を整理していました。そこには直治が麻薬中毒に苦しんでいた時の日記がありました。

その日記を読んで、私は当時のことを思い返します。私が離婚したきっかけは直治の麻薬中毒なのでした。

上原二郎

私が山木へ嫁いだばかりの頃、直治は麻薬の支払いに困り、私にお金を貸してほしいという手紙を送ってきます。

私はお付きの婆さんのお関さんと相談して、身の回りの腕輪やドレスなどを売ってそのお金をお関さんに届けさせます。

直治はそのお金を小説家の上原二郎さんのところへ届けるよう書いていました。直治は何度ももう辞めると言いながら続けていて、何度もお金の催促の手紙をよこすのでした。

お関さんは上原さんが小柄で顔色の悪い不愛想な人だと言いますが、その奥さんは優しくてよくできた人だからこの人になら安心して渡せると言います。

私はある時、自分で上原のアパートを訪ねます。上原は一人で新聞を読んでいて、自分が直治の姉だと名乗ると鼻で笑います。

上原は外で話そうと連れ出し、地下の酒場に入ります。2人はそこでお酒を飲み、上原は直治が麻薬からお酒のほうへ転換するといいのにと言います。

しばらく話して、上原は窮屈だから帰りましょうかといい、タクシーを拾ってあげると言います。地下から階段を上る途中、上原は私にすばやくキスをします。

2人はそのまま黙って帰りました。

6年の振り返り

その後、夫からお小言を言われたときに、自分には好きな人がいるのだとカミングアウトします。夫は細田と恋仲だったことは知っているといい、もう忘れてほしいと言います。

その時お腹にいた赤ちゃんが細田の子供なのかと夫に疑われることもありました。

私は若く、周りの人たちに平気で細田と恋仲だと言いふらし、周りから白い目で見られるようになったため、私は実家に帰りました。

その後、赤ちゃんが死んで生まれて、私は病気になり、それ以来山木とは会っていないのでした。

直治は私が離婚したことが自分のせいだと泣き、その時に借金がいくらになっているのか尋ねると、それは恐ろしい金額なのでした。

私が上原と会い、良い人だと直治に伝えると、直治は喜び、上原と毎晩のように遊びに行き、アルコールへと転換することができたのでした。

それから6年の月日が流れ、今に至るのでした。

まとめ感想

私とお母さまは終戦の影響で、お金が無くなり、田舎の山荘に引っ越してきます。しかし私が蛇の卵を焼いたり、火事を起こして以降、お母さまは弱っていきます。

麻薬中毒の直治が生きていることがわかり、戻ってきますが、いまだに遊びまわっているようです。私は過去に離婚経験があり、それは直治の借金の影響や細田のことが忘れられないということがありました。

戦争が終わって、お金が無くなった私やお母さま、そして直治たちは弱っていくのを感じました。

「お金がなくなるということはなんと惨めなことなんだろうと気づいた」と私は貧乏になって初めて気づくところが、とてもリアルを演出されているのかなと感じました。

以上で前編は終了です!!後編は下のリンクから飛べます!!

斜陽 後編へ