【ネタバレ感想】「スイッチを押すとき」 著:山田悠介(やまだ ゆうすけ)

2022/04/28

カテゴリー:小説

スイッチ

概要

このページでは「スイッチを押すとき」のネタバレ感想をしています!

映画化ドラマ化もされた有名な作品で、2005年に初版が発行されて以来かなり話題を集めました。

著者の山田悠介さんも「リアル鬼ごっこ」や「☓ゲーム」など多くの有名作品を世に出しています。

命の大切さを教えてくれるとても面白い作品です。

目次

彼岸過迄(ひがんすぎまで)

登場人物

・南洋平(みなみようへい)…YSCの監視員。主人公。

・堺信秀(さかいのぶひで)…YSCの本部長。

・坂本(さかもと)…洋平と同じYSCの監視員。

・高宮真沙美(たかみやまさみ)…YSCに収容されている17歳の少女。洋平に親しげに話しかける。

・新庄亮太(しんじょうりょうた)…同じくYSCに収容された17歳の少年。監視員に敵対心を抱く。

・小暮君明(こぐれきみあき)…足の不自由な少年。YSCに収容された少年。

・池田了(いけだりょう)…YSCに収容された17歳の少年。

赤いスイッチ

南洋平(みなみようへい)は本部長の堺信秀(さかいのぶひで)に呼びだされます。

堺はおととい最後の一人がスイッチを押したため、八王子の施設から横浜へ異動となることを伝えられます。

2007年、若年層の自殺者数が増加したことをうけ、政府はYSCと呼ばれる青少年自殺抑制プロジェクトを立ち上げます。

全国からランダムに集められた子供たちは5歳で心臓に装置を付けられ、その5年後、施設へ強制収容されます。

親はそのことを知らされますが、監視も付くため命令には逆らえません。子供たちはセンターにつくと、赤いスイッチを渡され、それを押すと自分の心臓が停止すると伝えられ、実験が行われるのでした。

この実験によって、確かに自殺者は減少傾向にありました。子供たちは独房で過ごし、昼食後L室と呼ばれる大きな部屋で他の子供たちとの交流が許されます。

4人の子供たち

洋平は監視員2年目の27歳で、このプロジェクトに対して憤りを感じますが、自分の無力さに嫌気がさしています。

所長と会い、同じ監視員の坂本とペアで行動するよう言われます。

この施設の子供たちは全員17歳で、高宮真沙美(たかみやまさみ)・新庄亮太(しんじょうりょうた)・小暮君明(こぐれきみあき)・池田了(いけだりょう)という名前でした。

どうやら7年間もこの施設で生活しているようです。小暮は足が悪いようで、車いすに乗っています。

L室へ移動すると、高宮が洋平に話しかけてきます。2人が話していると新庄が監視員と話しすぎるなと怒鳴ります。

2日目以降も高宮は洋平に話しかけてきて、7年間もこの施設にいるとは思えない明るさを感じます。

次の日、小暮と高宮は外で絵をかいていました。洋平は隠れて色鉛筆を持ってきて、彼らに渡します。2人は喜んでくれたようです。

それから10日ほど、洋平は4人に話しかけたりしていました。そんな時、普段言葉を発さない小暮が洋平に口を開きます。

それを見て、池田了は洋平を屋上へと呼びだします。池田によると、小暮が監視員に口を開いたのは初めてなんだそう。

彼は幼馴染の矢田遥(やだはるか)について話をします。

池田の願い

池田によると、矢田遥も同じ日に別の施設に収容されていて、もし会えたらこの1枚の紙を渡してほしいと頼まれます。

洋平は仕事終わりに矢田の収容されている施設へ向かいます。施設へ行くと、彼女は唯一の生き残りなんだと説明されますが、中には入れませんでした。

帰ろうとすると、男が近寄ってきてをくれれば紙を渡してやると言います。洋平はその男に金を払い、依頼しました。

一週間後、洋平の携帯が鳴り、金を渡した男から矢田遥がスイッチを押したと知らされます。原因は母の死なんだそう。

彼によると、手紙を渡して以降、矢田は泣いてばかりいました。洋平は池田に真実を伝えられませんでしたが、地下に所長がやってきて、池田に矢田遥がスイッチを押したと伝えられます。

その日の夜、池田もスイッチを押してしまいます。

脱走

池田了の死は3人に大きなショックを与えたようです。高宮はずっと泣いています。その日の夜、洋平は復讐を決意します。

深夜、センターの門に立っている警備員2人をスパナで殴り倒します。洋平は彼らを連れ出すためにやってきたのでした。

こっそり地下へ忍び込み、カードキーで扉を開くと、警報が鳴り響きます。洋平は3人にスイッチを持つよう言い、逃げ出すことを伝えます。

洋平は小暮の車いすを押して走り出しますが、出入り口付近には坂本がたっていました。坂本はもう止めても遅いだろうと逃がしてくれました。

洋平は乗ってきた車に乗り込み、彼らともにセンターを後にしました。

洋平たちは群馬県吉永村の小さな廃校に隠れます。ラジオを付けると、センターから逃げ出したことが大騒ぎとなっています。

朝になり、町で服と食糧を買い込みます。皆でカレーを食べていると、新庄は自分の弟について語ります。弟は重い心臓病を抱えていて、離婚した母が一人で働き弟の面倒を見ているんだそう。

小暮の願い

高宮は会いたい人はいなくて、みんなと一緒にいられればそれでいいと言います。しかし新庄は捕まってでも家族と会いたいと思っていました。

逃亡生活も8日目に達して、食料が尽きてきます。洋平は捕まってでもいいからみんなの願いをかなえてやりたいと思っていました。

新庄は洋平に家族に会いたいと伝えます。洋平は残りの2人を呼び出し、皆の願いを聞きます。

小暮は少し黙って、「父と約束した絵を見たい」と呟きます。その絵とはセリアルの描いた「絵」という作品でした。

洋平は坂本に電話し、セリアルの「夢」がどこにあるのか尋ねます。坂本は千葉の国際美術館だと調べてくれました。

セリアルの「夢」

明日、千葉の国際美術館に小暮を連れていくと、小暮の両親に電話を掛けます。

彼らははじめいたずらかと思いましたが、その美術館にはセリアルの「夢」が展示されていると知り、確信します。

次の日、美術館の前に車を止めると、小暮の両親がいました。車を出て、小暮は2人に抱きしめられます。洋平は2人に自己紹介をして、館内へと入りました。

美術館にはセリアル展示会場があり、いくつかの作品が並べられています。小暮の父がセリアルも車いすの生活をしていたんだと説明してくれました。

一番最後の作品「夢」の前にたどりつくと、3人は泣き続けます。そんな時、出口から警官と刑事が歩いてきます。

男たちは南洋平だなと確保しようとしますが、その瞬間小暮の父が警官たちを殴ります。洋平たちは小暮の両親が壁となって逃げだすことができました。

車は警官たちに見張られていて、小暮の車いすを押しながらひたすら逃げます

路地裏に隠れた洋平たちはこれからどうするか相談します。小暮は車いすの自分を置いて逃げてほしいと訴えかけます。

新庄と高宮は止めますが、2人に会えたからもう十分だと、みずからスイッチを押しました。

新庄の願い

洋平と新庄、高宮は小暮を残して、タクシーや電車で逃げ、坂本のところへ向かいます。

そこには坂本の自宅があり、車を貸してくれました。新庄はこれから家族に会いに行きたいと洋平に言います。

車は新庄の家の近くにつき、彼は自宅へ向かいます。別れの言葉を交わして、洋平は行き先も分からずアクセルを踏みます。

新庄は去ってしまった車を振り返らず、まっすぐ自宅へ入ります。出てきた母の背は自分よりも小さく、白髪も目立ちます。

母と弟の圭吾は出迎えてくれて、母はうどんを作ってくれました。3人が幸せな時間を過ごしていたところに玄関のドアが激しくたたかれます。

新庄は素直に連行され、パトカーに乗せられました。思い残すことは無いと新庄はスイッチを押します。

園長の話

洋平の携帯が鳴り、から新庄がスイッチを押したと伝えられます。今すぐ降参すれば高宮の自由を保障しようと堺は提案し電話は切られました。

高宮にそのことを話すと洋平を犠牲にしてまで自由は欲しくないと言いました。洋平は本当に会いたい人はいないのかと尋ねると、本当の母に会いたいと言います。

高宮は6歳の時に本当の母に養護施設に捨てられ、2年後に何も知らない里親に引き取られたのでした。

2人は養護施設のある静岡県に向かいます。養護施設では園長が出迎えてくれて、高宮のことを覚えていました。

涙目で高宮を抱きしめます。彼女の本当の母がどこにいるのか尋ねますが、園長も知らないようです。園長は大事な話があると高宮だけを呼び出します。

2人が出てきて、洋平はどんな話だったのか尋ねますが、高宮は答えてくれませんでした。

洋平の過去

高宮は母親との思い出の場所を巡りたいと、動物園・映画館・遊園地・水族館を巡ります。高宮は懐かしんでる様子もなく、悲しそうにしてもいないので洋平は彼女がわかりませんでした。

2人は最後に母が生まれ育った伊良湖(いらご)海岸へ向かいます。洋平は海岸に見覚えがありました。

高宮は洋平に会えてよかったといい、後ろからパトカーが数台やってきます。高宮がスイッチを押すと、洋平は倒れました。

高宮は地面にスイッチを置き、車内で語られた洋平の過去を思い出します。

洋平はポケットからスイッチを出し、自分も実験対象者なんだとカミングアウトします。洋平の父にはがいて、その息子が実験対象者に選ばれ、姉夫婦は息子を取り戻そうとして処刑されたんだそう。

洋平の父はそれを知らせに来た3人の男を包丁で刺し殺し、自分も自殺してしまいました。洋平はそれを目撃して、死というものに恐れを抱き、1人で15年間もセンターで生活していました。

洋平が25歳となった時、本部長の堺がやってきて、タイムリミットが来たとスイッチを押すよう言われます。

ただ、特例としてスイッチを押すか、監視員となるか選ばせてくれて、今監視員をしていると洋平は語りました。

もし高宮がスイッチを押すときがあったら、一緒に自分のスイッチを押してほしいと高宮にスイッチを託したのでした。

結末

高宮は園長の話を思い返します。園長によると、高宮と洋平は腹違いの兄なんだと言います。初めて好きという感情を抱いた相手が兄だということにショックを受けます。

どうやら洋平の父が自殺した後、洋平の母は再婚し、高宮が生まれたようでした。洋平に自分たちが兄弟だと言うことはできませんでした。

高宮は「ありがとう、お兄ちゃん」と自分のスイッチを押します。2人の顔は笑っているようでした。

まとめ感想

洋平は池田了の死をきっかけに残りの3人と共に施設を脱走します。

子供たちの願いをかなえながら子供たちはスイッチを押していき、自分のしていることが正しい事なのか洋平は分からなくなります。

高宮は洋平と兄弟だと知り、そのことを明かさず洋平と海岸でスイッチを押します。洋平たちは全員スイッチを押して、命を絶ってしまいました。

高宮が洋平に兄弟だと言わなかったのは、洋平にこれ以上悲しい気持ちになってほしくなかったからかもしれないですね。

洋平と同じ監視員の坂本も逃亡をかなり手助けしてくれて、心の中では子供たちを助けたいとひそかに思っていたのかもしれません。

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