「パニック」ネタバレ感想 -著:開高 健(かいこう たけし/けん)-
2021年7月28日
カテゴリー:小説
概要
山林課のしたっぱ職員俊介が、ネズミの大発生を予言しました。
報告書を提出するも、上司や局長は真剣にとらえておらず、汚職に忙しいようすです。
予言通りネズミが大量発生し、村は大パニックに陥ってしまいます。
行政は、ネズミ退治に、賞金・イタチ・毒薬を使用するもあまり効果ありません。
俊介が上司からネズミはすべて退治したことにしたら、東京へ栄転させてあげるというお誘いを受けた後、
大量のネズミは湖へと飛び込んでいき、大量のネズミは死んでしまいました。
目次
1.登場人物
俊介…山林課の職員で、本作の主人公です。
課長…俊介の上司で、局長と共に汚職に手を染めています。
局長…さらに課長の上司で、汚職の元凶です。
研究課長(農学者)…俊介にネズミのことを伝えた研究者です。
2.ストーリー
小さな異変
俊介の勤める地方でササが一斉に実を結びました。
それは1836年以来きっちり120年ぶりに起こった現象でした。
以前の開花の際には、凶作だったため、住民がササの実を食べて飢えをしのぎました。
しかし、今回は豊作だったためササの実は放置され地面にばらまかれました。
そのことを知った俊介は上司の課長を飛ばして、直接局長に報告書を提出しましたが、
局長は汚職に忙しいようで、気にしていない様子でした。
ネズミ大量発生
冬が終わり春になって雪が解けると、ネズミが大量発生してしまいます。
木がかじられ、被害甚大、赤ん坊ののどを食いちぎるネズミも出てきます。
俊介はネズミが大量発生すると予言した際、散々馬鹿にされましたが、それでもネズミ駆除に奔走します。
理由はひまつぶし。駆除されたネズミを集め、火をつけ、それを眺める俊介は快感を感じます。
住民は俊介が事前にネズミの大量発生を報告していたことを知り、俊介を英雄視していきます。
それでまた同僚や上司は反感を感じます。
汚職は続く
ネズミ退治のために課長は、ある業者からイタチを役所のお金で大量に購入します。
その裏でその業者は放ったイタチを密漁し、再度役所に3倍の価格で売却します。
課長は業者からお金をもらって、そのことを黙っていました。
俊介はイタチに印をつけていたので、そのことに気づき課長に鎌をかけ、そのことを知ってしまいます。
その後、俊介は局長に呼ばれて、イタチのことを黙っておくこと、ネズミはすべて退治したという報道をすることを指示しました。
それを実行すれば、東京へ栄転させてくれるという。俊介も汚職に誘われる展開になります。
3.結末
そんなとき、研究課長に呼ばれ、湖まで連れていかれると、
ネズミは大量に湖に飛び込んで行くのが見えました。
結局、俊介は元の汚い人間の中に戻っていきます。
4.感想
実際にササは100年に一度開花し、一斉に実をつけます。
その時にネズミが大量に発生するのは本当にあることらしいです。
そのノンフィクションの要素と、人間の汚い部分、汚職の要素がうまく表現されていました。