【ネタバレ感想】「遅霜おりた朝」「石の女」 著:重松清(しげまつ きよし)
2022/04/15
カテゴリー:小説
概要
このページでは重松清さんの「遅霜おりた朝」「石の女」のネタバレ感想をしています!
この2作品は同じく重松清さんの「みぞれ」の文庫本に収録されています!
同じみぞれに収録されている「拝啓ノストラダムス様」「正義感モバイル」と「砲丸ママ」「電光セッカチ」のネタバレ記事もあるので良ければそちらもご覧ください!
目次
遅霜おりた朝
登場人物
・修二(しゅうじ)…タクシードライバーで元教師。
・ヒロ…ミーコの彼氏。修二に長野県まで乗せていってほしいとお願いする。
・ミーコ…ヒロの彼女。母親が家出し、父親と暮らす。
教師を辞めた理由
タクシードライバーの修二は元々中学校の教師をしていて、半年前に転職したばかりでした。
修二は熱血教師で、肩をポンとたたいたりスキンシップを欠かしませんでした。
去年の6月ごろ、授業中の態度が悪かった学生を呼び出し、説教をした後肩をポンとたたいた時、2人は暴力と判断し殴られます。
教室の生徒は誰も止めません。生徒たちにとって、修二の「夢を持てよ」という言葉はうざい言葉で、スキンシップは暴力なのでした。
怪しい少年少女
日付が回ったころ、あくびが続き外の空気を吸いに出ます。トランクからサッカーボールを出し、公園で壁に向かってボールをけります。
戻ってくると、少年が中学生くらいの少女を連れて乗せてほしいと言いに来ます。
少年は髪を染めていて、ピアスを開けていました。おそらく高1か高2くらいで、怪しいと思った修二はどっちの方面なのか尋ねます。
長野県のほうだと1万円札を2枚出します。少女は「もし足らなければ、していいよ」といい、少年はそれを聞いて怒ります。
結末
別の車を探すよう言いますが、少年は少女の母親がさっき死んでしまったんだと懇願しました。
修二は熱意に負け、2人を乗せてあげました。八王子を過ぎたころメーターが2万を超え、少年はサラ金で借りるから走ってほしいとお願いします。
しばらくして少年はすやすや寝てしまいます。少女によると彼は前の日夜勤をしていて、本当は寝てる時間なんだと言います。
少女によると、彼女の母親は長野に男を作って家出してしまったんだそう。母親の死の知らせを聞いて彼氏のヒロに連絡を取り、父親の家を出てきたんだと語ります。
修二が「お母さんを恨んでいる?」と少女、ミーコに聞くと、ちょっと恨んでいるけど、情熱のある人生でうらやましい気持ちもあると答えました。
2人はいつの間にか寝てしまったようです。手をつないでいるのをみて修二は頬を緩めます。メーターが3万円ほどで止まりそうで、1万円程度ならと自分の自腹で送ってあげることにしました。
石の女
登場人物
・雅美(まさみ)…今年41歳で、子供なし。ペットの龍之介を飼っている。
・僕…同じく41歳で雅美の夫。
・史子(ふみこ)…雅美の友人。ペットの龍之介を人間だと勘違いしている。
・龍之介(りゅうのすけ)…シベリアンハスキーの13歳の老犬。
・恭平(きょうへい)…僕の妹の息子。雅美と僕の息子の代役を務める。
雅美の嘘
元旦のお昼に、雅美と僕は年賀状を見ていました。
2人とも今年41歳で、子供はいません。不妊の原因は雅美の排卵数が極端に少ないのが理由で、何年か前から年賀状を出すのを止めました。
雅美が家に子供がいないことをわざわざ知らせるのを嫌がったからです。雅美は中学時代の友人の史子からの年賀状を見てため息をつきます。
去年の正月に、雅美は中学時代過ごした町で同窓会に出席しました。そこで会った史子から「龍之介君って中学受験するの?」と聞かれます。
以前史子への年賀状に「龍之介も2歳になりました」と間違って書いてしまったのが原因でした。
雅美は龍之介を本当の息子として話を合わせてしまいます。さらに史子は1月9日に家に遊びに来るようです。
2人の龍之介
龍之介は僕と雅美が28歳の時に飼い始めたシベリアンハスキーで、今年13歳になる老犬なのでした。
2人は史子にどうやって嘘を打ち明けるか悩みます。僕は横浜に住む妹に電話して甥っ子の恭平を代わりにすることに決めます。
翌日甥っ子の恭平が泊まりに来て、龍之介の代わりをする練習をします。恭平はなんか面白いじゃんと乗り気です。
昼過ぎに尋ねてきた史子は完全に恭平を龍之介だと信じ込んでいます。史子の小学2年生の息子の浩之くん(ひろゆきくん)の遊び相手も務めてくれました。
タロー
しかし、浩之くんが次第にぐずり始め、龍之介の部屋が見たいと言い出します。部屋なんてもちろん無いので、僕と雅美は焦ります。
その時、龍之介が吠え、浩之くんは龍之介のほうに興味が移って何とかなりました。
僕は龍之介の名前をタローだといい、心の中で龍之介に謝ります。龍之介は少し吠えただけで体力を消耗し、息を切らしています。
結末
恭平に龍之介と呼びかけると、龍之介が僕や雅美の方を見上げてくうんと鳴きます。「違うお前じゃないと」僕は心が苦しくなります。
「タローあそぼ!」と頭をなでようとする浩之君に龍之介は激しく吠えます。吠え疲れてぐったりとなった龍之介を見て、雅美は龍之介の前にしゃがみ頭を撫でます。
雅美は僕のほうを見て、淋しそうに微笑みます。そして、2人は史子に本当のことをカミングアウトしました。
史子は自分の勘違いで迷惑をかけて申し訳ないと謝ります。史子はでも雅美はお母さんの顔をしてるよと言ってくれました。
まとめ感想
「遅霜おりた朝」では元教師のタクシードライバーの修二が深夜、長野県まで乗せてほしいという少年少女と出会います。送っていく道中、修二は少女の話を聞きます。
駆け落ちした母親の人生をうらやましく思ったのは、少女から1人の女性へと成長してきた兆しなのかもしれないと感じました。
「石の女」では、親戚の子を自分たちの息子に仕立て上げましたが、最終的に本当の龍之介のことがかわいそうになり、嘘をカミングアウトするというお話でした。
史子が言ったように雅美はシベリアンハスキーの龍之介を愛したことで、お母さんになれていたのかもしれないですね。
当サイトでは同じ「みぞれ」に収録されている「拝啓ノストラダムス様」「正義感モバイル」や、「砲丸ママ」「電光セッカチ」などネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!