「巨人と玩具」ネタバレ感想 -著:開高 健(かいこう けん/たけし)-
2021年8月17日
カテゴリー:小説
概要
キャラメル会社の宣伝課に勤める私と合田が、ライバル企業を出し抜いて、より多くキャラメルを売るために奮闘します。
ライバル会社よりも良い景品・懸賞をつけあい、加熱していく戦争。
しかし、大衆は確実にお菓子離れをしていて、取り返しのつかない所まできていました。
それに気づかない、気づいてないふりをするキャラメル会社。そのことに主人公は気づいてしまい、ため息をつきます。
目次
1.登場人物
私…キャラメル会社の宣伝課に勤める会社員。主人公。
合田…私と同じ役職で、スカウトマン。
京子…合田にスカウトされたモデル。虫歯・大きい鼻・口が逆に注目され、人気が出た。
2.ストーリー
売れないキャラメル
私と合田は、キャラメル会社の「サムソン」の宣伝課に勤めていました。
最近キャラメルが売れず、ライバル会社の「アポロ」「ヘラクレス」も不調気味のようでした。
社員や重役たちは、落ち続ける売り上げに、いろいろ言い訳をつけて見ないふりをしていました。
そこでサムソンはあえて虫歯があり、大きい鼻・口を持つ京子をイメージモデルとして採用し、多くの人の目を引きます。
さらに、サムソンは懸賞として、宇宙銃(スペースガン)・宇宙帽子(スペースヘルメット)などをつけます。
ほかのライバル会社も黙っておらず、大学までの返還不要の奨学金で保護者の気を引いたり、珍しい動物をプレゼントする会社も出てきました。
様々な懸賞を企業たちはつけ、懸賞戦争は過熱していきます。
商品の異物混入
そんな中、一番売り上げが良かったアポロの商品に有害物質が発見され、アポロは被害者に慰謝料を支払い、商品の回収をして戦線を離脱します。
主人公たちのサムソンはそれを聞いて、歓喜しますが、アポロの商品を買っていた層がサムソンの商品を買うわけではありませんでした。
世間はキャラメル自体から離れていき、売り上げはさらに低下していきます。
キャラメル会社はそれに気づかないふりをしていて、主人公はそれを見てため息をつきます。
値崩れ
小売店や、問屋はキャラメルが全く売れず、在庫を多く抱えたので、一部の店が勝手に半額にしたり、おまけをつけて売り出し、値崩れを起こしてしまいます。
さらにその騒動は加速していき、サムソンのイメージモデルである京子までもが世間で人気になってしまい、サムソンを離れていきました。
3.結末
最後の手段として、京子に宇宙銃と宇宙帽子を身につけさせ、街を歩いてもらおうと思っていた合田は、おかしくなってしまいます。
最終的に合田は、宇宙帽子・宇宙帽子を自身が身につけ、自信が広告塔となるといって張り切っていました。
4.感想
今の時代より少し前の、キャラメルが日本に入ってきた頃のお話です。
世間のお菓子離れ・景品の過激化・商品の異物混入・商品の値崩れ、、、バブル崩壊を匂わせるような展開で、後半はすごいテンポでお話が進んでいきます。
「パニック」と同じノンフィクション作品で、一昔前の世の中の風刺を描いているように感じます。