【ネタバレ感想】「解錠師(かいじょうし)」The Lock Artist 著:スティーヴ・ハミルトン【ネタバレ後編】
2022/07/10
カテゴリー:小説
概要
このページはスティーヴ・ハミルトンさんの書かれた「解錠師(かいじょうし)」のネタバレ後編となります!前編読んでいない方はそちらから読んでいただくことをオススメします!
前回までのお話で、空き巣に巻き込まれたマイクルが肉体労働を強いられ、そこに住むアメリアに恋に落ちます。解錠師となった後のマイクルはプロの盗人集団のジュリアンたちと出会います。
前編同様、解錠師になる前を赤、なった後を青で示しています。
目次
解錠師
登場人物
・マイクル…口がきけない少年。奇跡の少年と呼ばれている。
・ゴースト…マイクルの金庫開けの師匠。
・リート叔父…マイクルの叔父でマイクルを引き取る。
・デトロイトの男…マイクルを雇うボス。
・グリフィン…マイクルと同じ高校で1つ上。マイクルの親友。
・マーシュ…アメリアの父。
・アメリア…マイクルの恋人でマーシュの娘。
・ジュリアン、ラモーナ、ガナー、ルーシー…プロの盗人のチーム。
交渉決裂
ルーシーとマイクルはクラブに戻るとジュリアンとラモーナがウェスリーと話しているのを見つけます。
どうやらジュリアンが麻薬を売ってやるという話をしてウェスリーに現金を用意させていたようでした。
現金を用意してくると言って戻ってきたウェスリーの顔は真っ赤で、口喧嘩をした後ジュリアンたちはクラブ会場を後にします。
マーシュの変容
深夜1時35分に家を出て、マーシュ家につきますが裏口のドアは施錠されていません。部屋に入るとアメリアが起きていました。
アメリアはマイクルが書いた人魚のアメリアの絵を見ます。アメリアはどうして私が人魚になりたかったのを知っているのか尋ねます。
2人はキスをして服を脱いで一緒に寝ました。事が済んだ後、アメリアと別れの挨拶をして家へ帰りました。
翌日、またマーシュ家に戻ると、書斎へと通されました。マーシュは穴掘りをする代わりにアメリアの話し相手になってあげてほしいと語ります。
マーシュの変わりように何を考えているのか、その時のマイクルにはわかりませんでした。
ジュリアンとゴーストの出会い
18歳の誕生日を迎えたマイクルにジュリアンたちはバイクをプレゼントしてくれました。
しばらくジュリアンたちの家に居候し、少し経った頃黄色のポケベルが鳴ります。相手は「ハリントン・バンクス」といい、デトロイトの中古品店であっただろうと言ってきます。
マイクルはその男を覚えていましたが、電話を切り、黄色のポケベルの電池を抜きました。
ガナーはジュリアンの準備期間が6か月もかかることに苛立ちを覚えているようでした。さらに自分の役割がつらいものばかりが気に入らない様子です。
ジュリアンはデトロイトの男に会った時のことをマイクルに話します。
何年か前、クルーザーで金持ちたちがポーカーのトーナメントをすると聞きつけ、ジュリアンはクルーザーのワインを届けるふりをして金庫を探ったようです。
しかしデトロイトの男に捕まり、見逃す代わりにある電話番号を渡されます。その番号の相手が腕利きの金庫破りのゴーストで、今後は戦利品の10%を渡すよう約束させられたとジュリアンは語ります。
デトロイトの男
アメリアとマイクルは一緒に椅子に座り話をしていました。長いキスをしてアメリアに手話をいろいろ教えます。
その夜マーシュ家でバーベキューが行われ、マイクルは共同経営者のジェリー・スレイドと会います。
マーシュがスレイドにも解錠を見してやってほしいと言い、鍵を開けてやります。マーシュはピッキング道具をマイクルに贈ります。
マイクルはピッキング道具が手に入ったことにるんるんで家に帰ると、リート叔父はマイクルにバイクをプレゼントしてくれました。
客がつけを払えなくて、かわりに持ってきたんだそう。アメリアを後ろに乗せたくて、アメリアの元へ向かいます。
アメリアは父のマーシュが数人の男たちに連れていかれたと言います。しばらくしてマーシュが戻ってきます。
マーシュは奴らから大金を借りていて、マイクルがデトロイトにいる男に会いに行ってくれれば私たちは助かると語ります。
教えられた住所へ行くと、「ウェストサイド中古品店」と書かれた店につきます。中には60、65歳くらいの男がいて、「ゴースト」だと名乗りました。
中へ案内されるとそこには8つの金庫が円を描くように置かれています。ゴーストは金庫を開けるよう言いますが、マイクルはどれも開けれないと言います。
ゴーストは「馬鹿にしてるのか」とマイクルを追い出しました。アメリアの家へ戻りますが、アメリアにどこへ行っていたのかと詰め寄られます。
出ていこうとするアメリアを呼び止めようとしますが声は出ません。マイクルは声が出ないことにいら立ちます。マイクルはアメリアの手を取り、バイクにまたがります。
2人は通りに走り出します。
ガナーのたくらみ
ある時、ガナーとマイクルは2人きりになります。ガナーは例のクルーザーに連絡係を見つけたとマイクルに相談します。
2人でそのクルーザーに忍び込んで金を盗もうと計画してきました。考えてみてくれとガナーはその場を去ります。
しばらくして緑のポケベルが鳴り、相手はまたバンクスでした。彼はマイクルを助けたいといい、リート叔父さんのことも知っていました。マイクルは電話を切ります。
最近ルーシーはマイクルの部屋によくきて、マイクルの描いた絵を見ていました。マイクルが書いたアメリアの絵を見られ、ルーシーはキスをしてきます。
腕をマイクルに巻き付けあっという間に事が終わります。二人で横になっているとベッドの下からうなりが聞こえ、赤いポケベルが鳴っています。マイクルは急いで支度をします。
触覚で感じる
次の日マーシュ家につくと、マーシュを連れて行った男3人組がいました。書斎にはマーシュとたばこを吸う男がいました。
その男はもう一度ゴーストのところで再挑戦してきてほしいと言います。アメリアの部屋へ行きますが、アメリアはもういません。
マイクルはもう一度ゴーストのところへ向かいます。マイクルの腕前を見て、触覚で感じるんだと言い残し練習するよう命じます。
家へ帰る前にマーシュ家へ寄ると、マーシュが一人で酒を飲んでいました。アメリアは遠くの安全な場所へやったと彼は言います。
「マイクルが仕事に集中しなければ、私は殺される」と言い、もしかしたらアメリアにも手が及ぶかもしれないとマーシュは言います。
赤いポケベル
赤いポケベルの番号にかけると、場所と時間を知らされ、マイクルはひたすらバイクを走らせます。
途中のモーテルに泊まっていると、青のポケベルが鳴り、電話を掛けるとまたバンクスでした。バンクスは青のポケベルの番号まで知っているのでした。
もう少しで君を助けてやれなくなると言いましたが、マイクルは電話を切り、目的地に向かいます。
目的地に着くと、デトロイトの男の部下の「寝ぼけまなこ」と「釣り帽子」、「ひげのっぽ」が出迎えます。
3人とマイクルはある家まで車で行き、出てきた男を寝ぼけまなこが殴ります。男を地下まで連れていき、金庫の暗証番号を聞き出します。
男はしばらく殴られた後、金庫の番号を明かし、中から大金が出てきます。寝ぼけまなこはマイクルに銃を渡して、男を打つよう言いますが、マイクルは動きません。
寝ぼけまなこは男を撃ち殺し、そして仲間の釣り帽子とひげのっぽも撃ち殺します。この2人はFBIの警察官と密会を重ねていたと寝ぼけまなこは言います。
寝ぼけまなこはマイクルに金を渡して去っていきました。今の場所が地元ミシガンに近く、バイクのエンジンをかけて2時間後、地元ミシガンへとマイクルは到着します。
5つのポケベル
一晩中錠をいじり、なんとなく感触を得られたマイクルはまたゴーストの待つ中古品店へ向かいます。
ゴーストの前で南京錠を開けて見せると、今度は金庫の開け方を教えてくれました。アメリアを家に帰すためにマイクルは金庫を開ける練習をし続けます。
ある時中古品店で錠を開ける練習をしていると、目の前に男がたっていました。その男は「ハリントン・バンクス」となのり、去っていきました。
その日の午後、ポケベルが鳴る音がして、ふたを開けると赤白黄青緑のテープが張られたポケベルが5つ入っていました。
1時間ほどしてゴーストが戻ってきてさっきなっていた赤いポケベルを見せると、顔を青くして電話を掛けに行きました。
その夜、金庫錠の内側で何か動いているのを感じます。次の日急いで金庫へ向かいます。接触域を探り番号を見つけだして金庫の解錠に成功します。その次の日、アメリアが帰ってきました。
久しぶりの帰還
地元ミシガンへと帰ってきたマイクルはリート叔父の家へとたどり着きます。
家の中には携帯電話があり、そこにはバンクスの番号が登録されています。マイクルはその携帯をポケットに入れ、札束を家においてマーシュ家へ向かいます。
マーシュ家には新たにプールが作られ、パーティが開かれています。
元気そうなマーシュと出くわし、マイクルを見て戸惑っています。彼はマイクルがここに姿を見せていいのかわからないと言います。
「最低のくそ野郎だ」とマイクルは思いました。アメリアはいまロンドンにいると彼は言いましたが、マーシュの車のステッカーにはミシガン大学のものが貼ってあります。
マイクルはミシガン大学へ行き、学生寮にアメリアの名前を見つけます。ドアをノックすると、中からアメリアが出てきます。1年ぶりの再会でした。
マイクルはこれまでの自分の出来事を描いた絵をアメリアに見せます。アメリアは涙を流し、「どうして金庫破りを引き受けたの?」と尋ねてきます。
アメリアはマイクルが子供の頃に起きた出来事と関係があると見抜きます。マイクルは生まれ育った場所へ彼女を連れていきます。
家の中に入り、壁に絵を描いて幼い頃の出来事をアメリアに伝えます。
幼いマイクルは床に座り込んで漫画を読んでいます。ソファーにはマイクルの母と父親ではない「ミスターX」という男が座っています。
ミスターXと母は寝室へと消えていき、8歳のマイクルはそこで何が行われているか察していました。
ある日、マイクルと母とミスターXが過ごしていると裏口から実の父が入ってきます。父が棒で何度もミスターXの顔面を殴り続けます。
部屋に入ったマイクルがリビングを覗くと、父が母に腰を打ち付けていて、横に倒れているミスターXの秘密の場所は血まみれでした。
マイクルは寝室の保管庫の中に隠れますが、鍵がかかっていて開かないことに気づきます。父がやってきて内から保管庫を開けるよう叫びます。
父は保管庫を持ち出し外へ出たようです。隙間から水が入ってきます。どうやら父はマイクルと共に川に飛び込んだようです。
アメリアは絵を描きたしながら涙を流しています。マイクルは川に沈んだ保管庫の絵を描いて手を止めます。
実際には誰かが保管庫を引き上げてくれましたが、マイクルの頭の中ではまだ閉じ込められたままで声が出せないのでした。
マイクルはアメリアを寮の前まで送り、「手立てを見つけて帰ってくる」というメモを渡し、バイクを飛ばします。
ゴーストの引退
遠くへ行っていたアメリアはマーシュの家へ帰ってきていました。2人はキスを交わし抱き合います。
マイクルには他に道はありませんでした。ゴーストに協力すれば周りのみんなは幸せに暮らせると考えます。
金庫を1つ開けてやれば済む話だとマイクルは軽く考えていました。中古品店にかよい、さらに早く金庫を開けられるようになります。
アメリアと会う頻度も増え、ベッドを共にする回数も増えます。マーシュは何も言わずそれだけ借りが大きいことを示していました。
ある日、中古品店へ行くとゴーストは仕事をするときのルールを伝え、ポケットベルを渡されます。ゴーストはこの中古品店の鍵もマイクルに渡します。
ゴーストのいない中古品店と学校へ通う日々が続き、ある日赤いポケベルが鳴ります。約束の時間に場所へ向かうと釣り帽子とひげのっぽと寝ぼけまなこがいます。
男3人とマイクルはある店に向かい、解錠して中へ侵入します。金庫まで行き、マイクルは解錠に成功しますが中身は空っぽです。
男3人が驚いている間に、裏のドアに車が止まります。3人はあっという間に逃げてしまいました。マイクルは入ってきた男に銃を突き付けられます。
銃の男は仲間の名前を教えたら助けてやろうと言います。「3秒やるから死ぬか話すか決めろ」と言われ、何もできず3秒がたち、マイクルは死んだと思いました。
しかし拳銃は引かれず、扉から寝ぼけまなこたちとゴーストが入ってきます。どうやらテストに合格したようです。
寝ぼけまなこはいいものを見せてやると車のトランクを開けると、マーシュのパートナーの「ジェリー・スレイド」の死体を見せられます。
学校は2日だけ行って、青のポケベルが鳴り荷物をまとめて出かけます。朝家を出るとき、リート叔父は学校はどうしたと言いますが、親指を立てて叔父と最初で最後の抱擁をします。
近くの骨とう品店へ行き、アメリアに渡す指輪を買います。マーシュの家へ行き、道具を取り出して裏口のドアをピッキングします。
アメリアは学校へ行っているようで、マイクルは彼女を連れていくことも考えますが、ジェリーの死体を思い出し、連れてはいけないと考えなおします。
指輪を机の上に置き、マイクルは仕事へ向かいます。
結末
ジュリアンたちの家に戻ると、ガナーの提案に乗ることを伝えます。400万ドルという大金からジュリアンとラモーナもしぶしぶ参加します。
急遽停泊場所が変わり、急いでクルーザーへ向かって、ワインを届けるふりをして中へ潜入します。
見つけた金庫は電子金庫でしたが、パウダーを使って数字を絞り、金庫の解錠に成功します。
中には当初の2倍の800万ドルが入っていて、持てるギリギリの600万ドル分を盗むことに成功します。しかし、ガナーは残りの200万ドルを取りに行くと言います。
船に戻って200万ドルを詰め終えたところで、外から寝ぼけまなことデトロイトの男が歩いてきます。ガナーとマイクルは海へと飛び込み、なんとかやり過ごすことができました。
ガナーの協力者から電話があり、仲間割れをしてデトロイトの男と寝ぼけまなこは死んだと知らされます。
マイクルは自由の身となりアメリアに手紙を送ります。ジュリアンたちの家に戻ると、部屋が散らかっていて、浴室ではジュリアンとラモーナの死体がありました。
マイクルは携帯を使ってバンクスに助けを求めます。本棚の裏の金庫部屋に、膝まずくガナーと寝ぼけまなこがいました。
どうやら2人が黒幕のようです。寝ぼけまなこはマイクルに銃を突きつけます。デトロイトの男が殺されたのは本当のようです。
寝ぼけまなこは金庫を早く開けるよう言い、ガナーの眉間を銃で打ち抜きます。
マイクルは金庫の接触域を探りながら、開けた瞬間殺されると察します。あと取っ手を回すだけになり、寝ぼけまなこが微笑をうかべるとドアの方からバンクスがやってきます。
寝ぼけまなこは微笑をうかべながら銃をおとしました。それからマイクルは逮捕され、10年が経ちます。
マイクルが奇跡の少年だということと、情報提供をしたことから禁固10年以上25年以下の判決が下されました。
逮捕後4年ほどしてアメリアから漫画のコマが書かれた絵が届きます。
漫画には、ウェディング姿のアメリアが書かれています。彼女はマイクルのことを思い出し、 式場から逃げ出します。
マイクルの生まれた家の川へ着くと、川の中へもぐり人魚の姿へと変わりました。
人魚はマイクルの閉じ込められている保管庫まで行きダイヤルを解錠します。中にいたマイクルは「遅かったじゃないか」と言葉を発します。
ここを出てアメリアに再会すれば、自然と言葉が出てくるだろうとマイクルは思いました。
まとめ感想
マイクルはアメリアを守るために解錠師となり、ジュリアンたちと協力してデトロイトの男を倒すことに成功します。
しかし、ガナーの協力者が実はデトロイトの男の右肩の「寝ぼけまなこ」でジュリアンたちは殺されてしまいます。(ルーシーはガナーが遠くへ逃がしたようです。)
マイクルがバンクスに助けを求めたことでマイクルはぎりぎり助かったというストーリーでした。
2つの時間軸から物語を語ることで、謎が解けたり1つの結末へ一気に収束していく様子がとても読んでいて爽快でした。
500ページ強とかなりボリュームがありますが、時間があれば是非読んでみてください!
以上となります!当サイトでは他にも「植物図鑑」や、重松清さんの「ナイフ」などもネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!