【ネタバレ感想】「解錠師(かいじょうし)」The Lock Artist 著:スティーヴ・ハミルトン【ネタバレ前編】
2022/07/10
カテゴリー:小説
概要
このページはスティーヴ・ハミルトンさんの書かれた「解錠師(かいじょうし)」のネタバレ前編となります!後編は下のリンクから飛べます!
元々は海外で「The Lock Artist」として出版された作品で、エドガー賞など海外の様々な賞を受賞した有名作品です。
日本での人気も高く、文庫本も出版されています。約560ページとかなりボリュームがあるので、読むのに少し体力がいるかもしれません。
ネタバレ読んで面白いなと思われましたら是非文庫本も読んでみてください!
主人公のマイクルは鍵開けの天才で、高校生ながら犯罪へと巻き込まれていきます。
マイクルが解錠師となる前となった後の2つの時間軸が交互に語られて話が進んでいきます。分かりやすくするために解錠師になる前を赤、なった後を青で示しています。
目次
解錠師
登場人物
・マイクル…口がきけない少年。奇跡の少年と呼ばれている。
・ゴースト…マイクルの金庫開けの師匠。
・リート叔父…マイクルの叔父でマイクルを引き取る。
・デトロイトの男…マイクルを雇うボス。
・グリフィン…マイクルと同じ高校で1つ上。マイクルの親友。
・マーシュ…アメリアの父。
・アメリア…マイクルの恋人でマーシュの娘。
・ジュリアン、ラモーナ、ガナー、ルーシー…プロの盗人のチーム。
青のチーム
マイクルは青のチームに会いに行きます。青のチームはゴーストによると最高峰とまではいかないがプロの集団だといいます。
彼らは「金庫を開けられるのか?」と尋ね、マイクルは親指を立てます。マイクルは話すことができないからでした。
裏口のドアからマイクルたちは侵入し、25分ほどでマイクルは金庫をピッキングします。彼らはいくらか金をマイクルに渡して満足そうに帰っていきました。
マイクルはそのチームから紹介されて、ある中国人一家の家にに住んでいました。絵をかいたり、金庫錠を開ける練習をしたりして過ごし、ポケベルが鳴るのを待ちます。
ポケベルは5種類あって、白・黄・緑・青・赤がありました。ゴーストは最初の4つのポケベルが鳴ったら表示されている電話番号にかけるよういっていました。
相手はマイクルが喋れないのを知っていて、彼らは10%の使用料を「デトロイトの男」に払うという契約でした。
赤のポケベルはデトロイトの男直々の電話で、すぐに電話を掛けろとゴーストは言います。「この男だけには刃向かうな」と厳しく言われていました。
手元の金がなくなってきた頃、黄色のポケベルが鳴ります。黄色は一般向けで誰でもかけれるため、警戒してかかれとゴーストは言っていました。
食堂でポケベルを鳴らした男3人と待合せます。誰に聞かれているかわからない場所で強盗の計画を話す男たちにマイクルは嫌な予感がします。
ただお金が必要だったのでマイクルは参加することにしました。車で建物につくと窓から侵入して金庫の前につきます。
念のため取っ手を回してみると、鍵がかかっていません。分け前を分けてくれないかもとマイクルは考え、そっと戻して金庫の番号を探るふりをします。
しばらくして金庫を開け、中のダイヤモンドを盗み出しました。男たちはマイクルが天才だと喜んでいます。
男たちはとりあえず1300ドルをマイクルに渡して、またダイヤモンドを売りさばけたら分け前を用意すると言って去っていきました。翌日、問題が起こったとマイクルは呼び出されます。
初めての解錠
話はさかのぼり、マイクルが9歳だったころ、口をきけないという異常から病院をたらいまわしにされ、最終的に叔父のリートのところへたどり着いたのでした。
マイクルはリート叔父に引き取られた後、特別学校へ通いアメリカ手話を学んで、その後普通科の高校へと進学します。
ある日、リート叔父が古い錠を捨てたのを拾って仕組みを理解します。すっかり心を奪われ、紙クリップや金属片を使って鍵を開ける方法を見つけ出します。
第二の金庫
マイクルは男たちに呼ばれていくと、彼らはダイヤモンドがすべて偽物だったと言われます。彼らは今日これからもう一度忍び込んで、第2の金庫を見つけ出すと言います。
以前は見張りを置いていましたが、全員の目が必要だと男たちは全員家の中に入りました。ベッドの下にもう一つの金庫を見つけ、あと少しで金庫が開きそうになった時、銃声が聞こえます。
仲間たちが打たれて殺され、マイクルも殺されそうになりますが逃げ出します。ドアから外へ出た瞬間首に一撃を加えられマイクルは意識を失いました。
初めての友達
高校生のマイクルは鍵の開け方を知ってから、近くの骨とう品店で鍵をいくつか買い、練習を繰り返しました。
学校での生活は退屈でしたが、ある日美術の時間でマーティー先生に才能を認められ、上級クラスで授業を受けることになります。
そこではじめて「グリフィン・キング」という友達ができます。彼は一つ上の学年でした。高校2年生に進学し、「ナディーン」という気になる女の子もできました。
ある日、ダイヤル錠の鍵に手ごたえを感じてその場所が解錠番号の最後の数字でした。また近くの骨とう品店でダイヤル錠を買って仕組みを理解します。
11月になり、近くの高校とのフットボール大会の練習が始まります。去年マイクルの高校は負けていて、3年生のキャプテン「ブライアン・ハウザー」は意気込んでいます。
体育の授業が終わりマイクルが着替えていると、ブライアンがダイヤル錠の番号を忘れたと言っています。グリフィンがブライアンのところへ行き、「俺の相棒が鍵を開けてやれる」と言います。
実は、ダイヤル式の鍵の開け方を知った時、誰かに話したくなってグリフィンに披露していたのでした。マイクルはブライアンの鍵を開けてやります。
白いポケベル
首に一撃加えられ気絶したマイクルは手錠を掛けられています。マイクルは金属片を使って手錠の鍵を開け外へ逃げだします。
タクシーを捕まえ、中国人一家の家まで逃げのびます。家につくと白いポケベルが鳴っています。
さあ、さあ
高校2年生最後の日になり、グリフィンは遠くの美術学校へ進学するようです。この夜パーティがあり、グリフィンと共にクラスの女生徒の家へ向かいます。
そこにはナディーンがいました。ナディーンはマイクルにキスをして「ずっとこうしたかった」とささやきます。その後ナディーンたちとブライアンの家へ行きます。
結局、マイクルたちの高校は負け、ブライアンは無理やり元気を出しているようです。ブライアンはマイクルに鍵開けを披露してほしいと頼みます。
みんなが見ていて、「さあ、さあ」と掛け声をし始め緊張しますが、見事鍵を開けて全員興奮させます。マイクルは正直良い気分でした。
ブライアンたちはマイクルとグリフィンと連れ出し、フットボール大会で負けた高校のリーダー「アダム・マーシュ」の家に着きます。
ブライアンは「ミルフォードいけてる」と書いた横断幕を奴の寝室に吊るすんだそう。
マイクルはアダムの家の鍵をピッキングして、中へ侵入します。ブライアンの連れが棒で水槽をたたき割り、笑みを浮かべます。
マイクルは床をはねている金魚をすくってシンクの中に放してやります。グリフィンは奴らを置いて逃げようと言いますが、マイクルは豪華な家に見とれ色々部屋を見て回ります。
ある部屋に入るとデッサンが置かれていて、マイクルはその絵に引き付けられます。自画像も何枚かありました。その時家に車が止まり、マイクル以外は逃げ出しますが、マイクルだけが捕まってしまいます。
プロの4人組
中国人一家の家まで逃げのびたマイクルは白のチームが待つロサンゼルスへ向かいます。
白のポケベルはゴーストが確実だと断言したチームでマイクルは期待に胸を膨らませます。3日間が過ぎ、待ち合わせたホテルの部屋に2組の男女が入ってきます。
リーダーだとみられる「ジュリアン」、筋肉質な「ガナー」、ヒスパニックの女性「ラモーナ」、疲れ切った顔の若い女性「ルーシー」とそれぞれ名乗ります。
バイクに乗って4人の暮らす家へ向かいます。外装は普通の家でしたが、内装は最新式のものが揃いかなり家業が繁盛しているようです。
棚を反転させると奥に大きな金庫があり、これが今度開ける予定の金庫と同じものだと彼らは言います。マイクルは金庫の解錠番号を突き止め、実力を認められます。
辛い道を行くしかない
マーシュの家で捕まったマイクルは手錠を掛けられ、警察署へと連れていかれます。共犯の相手を教えるよう言いますが、マイクルはだまっています。
弁護士によると、ブライアンの父が州の警察官で、マイクルが共犯者の名前を言わないほうが罪が軽く済みそうだと言います。結局1年間の保護観察と決まります。
次の日、保護観察官とアダムの父、「ノーマン・マーシュ」は話し合い、夏の間マーシュ家のために修復活動をするということで決まりました。
マーシュと2人きりになると、正直殺したいほど憎んでいるといいます。
母が自殺してから娘の「アメリア」は殻に閉じこもっていて、今回の事件で余計怖がってしまったとマーシュは語ります。
家に押し入った奴らの名前を書かないなら、「辛い道を行くしかない」とマーシュは脅します。
ウェスリー
ジュリアンたちとマイクルは潜入対象の家の近くまで行き、ガナーだけが潜入してそのまま帰ってきます。マイクルには何が何だかわかりませんでした。
高級スーツに身を包んで夜になった街へジュリアンたちは繰り出します。用心棒に合図すると中へ通してくれました。
奥には標的の「ウェスリー」がいてジュリアンたちは挨拶します。
解錠失敗
マーシュはマイクルを裏庭へ連れ出し、プールを作るために穴を掘るよう命令します。もし娘のアメリアに話しかけたら殺すと言い残しマーシュは去っていきました。
マイクルはひたすら穴を掘り、めまいがしてきたころ、後ろにアメリアが立っていました。彼女は「どうしてマイクルは喋れないの?」と尋ねてきます。
マーシュが怒鳴り、アメリアは中へ戻っていきました。次の日体中がバキバキでしたが、もう一度アメリアに会いたくて作業に向かいます。
マーシュ家につくと錠前師がいて、錠を開けてみろと言ってきます。
マイクルは錠を開けれることを証明していいのか迷いましたが、錠前師が煽ってきたためマイクルは錠を開け、作業へと戻りました。
錠前師とマーシュは口喧嘩をしています。しばらく作業しているとまた後ろにアメリアがいて、少し話をすることができましたが、すぐアメリアのボーイフレンドに連れ戻されます。
その夜マイクルはアメリアの姿を思い出して絵を描いて封筒に入れ、翌日持っていきました。また錠前師がいて新しい錠を開けさせられますが、今度は解錠できませんでした。解錠に失敗したのは初めてのことでした。
金庫の解錠
マイクルは裏口から出てガナーの元へ向かいます。
ガナーが待っていた屋敷では赤外線センサーがあって、暖房の温度をマックスにしていたのでかなり暑く感じます。
ゆっくり2人は歩みを進め、金庫の前までたどり着きます。金庫を解錠し、中の札束をゴミ袋に移してうまく逃げ出せました。
2回目の空き巣
解錠に失敗した後、封筒を土の中に隠し、作業を始めます。しばらくしてアメリアを含めた男女2組が外のベンチに座って、マイクルの絵を描いているようです。
マイクルはめまいがしました。全てが解錠できなかった錠のせいに感じ、夜中にマーシュ家へ出かけます。
いつもと逆方向に錠をピッキングしてやると錠は開きました。アメリアの部屋まで行き、ドアのピンを押し込み鍵を開けます。アメリアは部屋で寝ています。
彼女の似顔絵を化粧台の上に置きマイクルは家を去ります。次の日アメリアは現れませんでした。
作業を終えた夜、アメリアと初めて出会った時にかけられた言葉を漫画のコマで描きます。マイクルは自分に吹き出しを付けて心の中で思っていたことを描きます。
その絵を封筒に入れ、夜中またマーシュ家に忍び込みます。今日はアメリアの部屋の鍵がかかっていませんでした。
翌日もアメリアは姿が見えず、怯えさせてしまったとマイクルは後悔します。それから4時間ひたすら穴を掘り絶望しながら車へ戻ります。
すると車に封筒が置いてあって、中にはアメリアが書いた2ページ目の漫画が入っていました。中にはなぜマイクルが喋らないことが気になるのかと思い悩んでいるアメリアが描かれていました。
マイクルはかえってまた続きを書きます。次の日車のダッシュボードに封筒を置いておき、屋敷に入ります。またアメリアの友達たちがいましたが、彼女だけが姿を消していました。
その後、酒を飲みながらマーシュがこっちを見て、「高い給料を払っている人間がサボり、ただ働きの少年犯罪者が一番いい仕事をしているのはなぜだと思う?」と投げかけてきました。
マーシュは明日からはもっと楽しいことをしようと言い残し、マイクルを帰してくれました。車に戻ると空から封筒が降ってきました。
マイクルは車の中で封筒の中身を見ます。中にはボーイフレンドのジークと喧嘩したことと、昨日の夜部屋に現れなかったことに不満を漏らしていました。
その夜、マイクルは机に向かっている自分を描き、大きな吹き出しを付けて夢の中で見たアメリアの姿を描き始めます。
まとめ感想
解錠師となった後のマイクルはプロから素人の盗人の金庫破りの手伝いをして、捕まりそうになったりして犯罪に手を染めていきます。
解錠師となる前、マイクルは独自に解錠方法を理解し、友人に披露してしまったことからブライアンの個人的な復讐に付き合わされます。
その結果マイクルだけ捕まってしまい、家主のマーシュに肉体労働を強いられます。その結果アメリアと出会い、マイクルは恋に落ちます。
錠前師に煽られて自分が鍵明けできることを証明したり、アメリアに会うために家に侵入したり、負けず嫌いでなんとしても目的をかなえたいという意志の強さを感じることができました。
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