【ネタバレ感想】「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」 著:夏目漱石(なつめ そうせき)

2022/04/23

カテゴリー:小説

彼岸花

概要

このページでは夏目漱石さんの「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」のネタバレをしています!

夏目漱石さんといえば「坊っちゃん」や「吾輩は猫である」などで有名な作家ですよね。

この「彼岸過迄」という作品もかなり有名で課題図書などに多く採用されている作品となっています。

目次

彼岸過迄(ひがんすぎまで)

登場人物

・敬太朗(けいたろう)…物語の主人公。須永の友人。

・須永(すなが)…敬太朗の友人。母と2人で暮らしている。

・田口の叔父さん…須永の叔父。いくつかの会社を経営している。

・松本…須永の叔父。

・千代子(ちよこ)…田口の娘で長女。

・百代子(ももよこ)…田口の娘で次女。

裕福な須永

須永は敬太朗の友人で、母と二人暮らしをしていました。彼の父はだいぶ良い地位まで行き、亡くなったため衣食住に不便はないようです。

須永の親族が出世の世話をしてやろうというのに、彼は言い訳を並べてだらだら過ごしているのでした。敬太朗はそれなら自分に譲ってほしいと冗談半分に言います。

ある日、敬太朗の家へ遊びに行くと、ある一人の女が先に入っていきました。

須永に女のことを聞く勇気がなく、内幸町の叔父を紹介してくれと持ち掛けます。彼は須永の母の妹の夫で今は4、5つの会社に関係を持っている人でした。

須永は叔父が多忙な人だからと保険をかけ、会ってみたまえと言ってくれました。

須永の叔父2人

叔父さんは大阪へ向かうようだから、それまでに会ってみてはどうかと須永から電話があります。敬太朗は早いほうがいいと、須永の叔父の家へ向かいます。

家へ着くと、立派な格好をした老紳士が出てきます。老紳士は須永から話は聞いたが、今夜来るとは思わなかったとまた来るように言います。

後になって須永から聞いた話によると、彼は1人碁盤に向かっていたそうで、早く追っぱらいたかったようです。

数日後、須永の叔父、田口へ電話をかけて13時に尋ねるという約束をします。約束の時間に訪問すると、今来客中だからまた今度来てくれと若い書生に言われ、捨て台詞を吐きその場を去ります。

須永に文句を言ってやろうと、家へ向かうと須永の母しか家にはいませんでした。色々お世話をされるうちに敬太朗の怒りは収まっていきます。

須永はもう1人の叔父、矢来の叔父のところへ行ったんだそう。彼は須永の母の弟で、須永と同じように贅沢屋で気が合うようです。

彼女に田口の叔父の件を伝えると、そのうち会ってくれるとなだめてくれました。

探偵の依頼

敬太朗は須永に田口の叔父に会う機会をもう一度作ってくれないかと手紙を送ります。

しばらくして、田口から直接電話がかかってきます。すぐ来れるかと言われ、敬太朗はすぐに田口の家へ向かいました。

田口はどの方面に就職したいのかと聞き、敬太朗はすべての方面に希望を持っているといい田口を笑わせます。

田口の私用でもいいから使ってほしいと敬太朗はお願いし、何かあればお願いすると返事してくれました。

4日ほどして、田口から電話があり、手紙に依頼内容を書いたからそれを読んで実行してくれと言われます。

届いた手紙には今日の4時から5時までに小川町で40歳ほどの男が降りてくるから、その男の行動を2時間監視してくれという内容でした。

その男の特徴が書かれていて、眉間に大きなほくろがあるからと書かれていました。敬太朗は主人公のような気持がしますが、大勢の中から見つけ出すことができるか不安でした。

1人の若い女

しばらく見張っていると同じように停留所を見つめる1人の若い女がいました。

5時をかなりすぎ、帰ろうかと敬太朗は思いますが、同じようにひたすら待っている女が気になり、観察することにしました。

すると、女の前にある1人の男がやってきます。その男は黒い帽子をかぶり痩せ気味で40代くらいだったので、手紙の特徴と一致しています。

女を観察することにして正解だったと敬太朗はありがたく思います。確信に変えるために眉間のほくろを見ようと歩き出した彼らの後を追います。

彼らは料理屋さんに入り、しばらくして敬太朗も中に入ります。席につこうとした敬太朗を男が振り返り、男の眉間に大きなほくろを見つけます。

会話の内容を聞くと、どうやら女のほうがどこかの目的地に行きたがっているようでした。男は用事があるからダメだと言っています。

探偵の報告

彼らは店を出て、別々の電車へ乗りました。もう依頼された2時間は過ぎたので、もう帰りたいと敬太朗は思いましたが、一応男が乗った電車に自分も乗りました。

先ほどの料理屋で顔を見られていたので、「おや?」と言う顔はされましたが、後を付けているとは思われていないようです。終点につき、男が車を捕まえます。

敬太朗も車を捕まえて、追いかけようとしますが、途中で見失ってしまいました。

田口に会って報告をしなければいけませんでしたが、探偵が成功しているのか失敗しているのか敬太朗は不安に思います。

田口に探偵の結果を話すと、特別嫌な顔はしませんでした。報告が終わった後、彼らがどんな関係だと思うかと聞かれ、敬太朗は全く分からないと答えます。

敬太朗はじかに会って話をしたほうがより分かるだろうと答えると、紹介するから会ってきなさいと田口に言われます。

ついでに女の方にも紹介状を書いてくれました。眉間に大きなほくろのあった男は松本と言うようです。

ほくろの男の正体

翌朝、雨の中松本に会いに行き、出てきた下女に紹介状を渡します。しばらくすると出てきてまた雨の降らない日に出直してほしいと言われます。

翌日良い天気となり、もう一度松本へ会いに行くと座敷へ通され、ほくろのある主人が出てきます。

松本は料理屋で敬太朗と会ったことを覚えていました。敬太朗は田口から依頼された内容を全て自白します。

それを聞いて、怒るよりも呆れているようでした。実は松本には2人の姉がいて、1人が須永の母親、1人が田口の妻と言う親族の関係なのでした。

停留所で会っていたのは田口の娘で、指輪を買ってほしいとねだられていたんだそう。

松本はきっと何か位置をこしらえてくれると言います。田口はそういう男なんだと松本は語りました。

雨の日

敬太朗は田口の紹介である地位を得て、度々田口の家に出入りするようになります。田口の娘は2人いて、上が千代子(ちよこ)、下が百代子(ももよこ)でした。

千代子が停留所で松本を待っていた女で、以前須永の家へ入っていった女も彼女なのでした。

それから1か月たち、須永のところへ敬太朗が遊びに来た時、千代子とたまたま会います。千代子は松本が雨の日に来客と会わないことについて知っていて、訳を教えてくれました。

松本夫婦には4人の子があって、その下に2歳になる宵子(よいこ)がいて、千代子はこの子のことをかわいがっていました。

千代子は松本の家に遊びにきていて、宵子へご飯を食べさせていました。食べている途中急にぐたりとして、背中をたたきますが反応がありません。

宵子の母や松本を呼び、医者を呼ばせますが、瞳孔が開いていてもうだめだと言います。それ以来、松本は雨の日に紹介状を持ってやってくる男が嫌になりました。

敬太朗は須永に千代子を貰う気はないのかと聞いてみます。2人の間には複雑な事情があるようです。須永は敬太朗にその事情について話してくれました。

母がした約束

須永の父は早く死に、小さい頃からよく母に逆らっていたようです。須永は母を大切にしたいという気持ちはあるものの、就職に対して取り組んできませんでした。

須永の母千代子が生まれたときに、この子を須永の嫁にくれないかと頼み、田口夫婦はそれを了承していました。そのことを須永が大学2年生の時に母から打ち明けられます。

須永は血族だから嫌だと答えましたが、母は自分のためにも了承してくれと頼みました。

千代子は須永の家に良く出入りしていて、須永の母にも自分に持ってこられた縁談の話などをしていました。

2か月ほど須永は田口の家に近づかないようにしていましたが、母は須永と千代子が接触するように努めていました。

千代子は世の中で活躍することを夫に期待しているので、彼女を不幸にさせてしまうと嫁にもらうつもりはありませんでした。

ライバル高木

須永が大学3、4年生の時、田口の家のものが鎌倉へ避暑に行っていて、千代子と百代子から須永と母に来るようにと言う手紙を貰います。

須永と母が別荘につくと、浴衣を着た男の姿が見えます。千代子に聞くと、彼は百代子の友人のお兄さんで高木というんだそう。

高木はさっきまで千代子と百代子と須永の話をしていて、須永が来たのを見て遠慮して帰ったといいます。須永は母を残して家に帰ると言いますが、千代子が帰さないと言います。

しばらくすると高木が訪ねてきました。肉の締まった血色のいい男で須永とは対照的な男でした。

彼は会話の主導権を握り、さらには須藤が会話を振りのけ者にしないように気遣います。須藤は嫉妬心を抱きました。

結末

次の日、魚を捕るために船を借ります。千代子と須永は先頭に並んで座り、高木と田口の叔父は真ん中、後ろに百代子と田口の一人息子の吾一(ごいち)が座ります。

高木は真ん中が空いているから来ないかと百代子に言いますが、百代子は遠慮します。須永は千代子に後ろが空いているそうだから行ったらどうかと言いますが、動こうとしません。

須永は少しうれしく感じてしまいました。船頭は器用にタコを捕り、高木はタコが泳いでるよと千代子を呼びます。千代子は行ったきり須永のところへ戻ってきませんでした。

その晩、須永は1人電車に乗って帰りました。須永は千代子が自分だけを愛しているようで、わざと近寄ったり遠のいたりしているように感じました。

須永が東京へ帰り、自宅の本棚を整理していると、須永の母も鎌倉から帰ってきました。さらには母を送るために千代子もついてきたのでした。

千代子は今日はここに泊まると言います。その日須永はなかなか眠れませんでした。翌日、須永が本棚の整理を再開していると、そこへ千代子がやってきます。

彼女は今日鎌倉へ戻るんだそう。須永はついまだ鎌倉には高木がいるのかと聞いてしまいます。彼女の顔には一種の侮蔑が輝き、そんなに高木のことが気になるのと高笑いしました。

千代子は泣きながら、「自分を愛していないのにどうして嫉妬するのか」といいます。

まとめ感想

物語の前半は敬太朗の目線で進み、後半は須藤と千代子の物語で進んでいきます。

敬太朗は田口から探偵の依頼を受け、親族である松本の後を付けます。その後、敬太朗にある程度の地位を与えてくれたようです。

須藤はいとこの千代子を嫁にもらう約束をしたと母から聞いて、千代子との関係を意識するようになります。初めは嫌だと反抗しますが、高木と仲良くする千代子をみて嫉妬心を抱くようになりました。

嫉妬心を感じて初めて、相手に恋をしていると気づくことはありますよね。逆に全く好きでもない相手に嫉妬心を抱くこともあると思います。

自分が本当に相手のことを好きなのか好きじゃないのかは自分でも判断するのが難しいのかもしれません。

以上となります!当サイトでは夏目漱石さんの「こころ」や「坊っちゃん」などもネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!