【ネタバレ感想】裸の王様(はだかのおうさま)著:開高健(かいこう けん/たけし)

2022/08/30

カテゴリー:小説

裸の王様

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概要

このページでは開高健(かいこう けん/たける)さんの「裸の王様(はだかのおうさま)」のネタバレ感想をしています!

画塾を経営するぼくは、自分の殻に閉じこもり、人の絵を描こうとしない太郎君に絵を教えることになります。

どうやら彼の両親に問題があるようです。

2人は距離を縮めていき、ある日太郎君は面白い絵を描いてきます。

目次

1.登場人物

・大田氏…大田絵具の社長。金儲けのことしか考えていません。

・大田夫人…大田氏の後妻で、太郎の実の母ではありません。年齢は若いです。

・大田太郎…大田氏の1人息子。大田夫人にきつくしつけられ、ひどい歪形をもちます。

・山口…小学校の教師。絵描き。大田氏から絵の支援を受けています。

・ぼく…画塾を経営。山口に頼まれて太郎を引き受けます。

2.ストーリー

太郎を引き受ける

主人公の「ぼく」は友人の「山口」に頼まれて、太郎君に絵を教えることを引き受けます。

大田夫人が太郎君を厳しくしつけたせいか、彼は年齢不相応な表情をしています。

太郎はチューリップや電車などしか描かず、人をかこうとしません。

ぼくの画塾では、子供に絵の描き方は教えず、子供の中に埋もれているイメージを引き出す手伝いをしていました。

電車を一台だけ書いて筆を投げた子供に対しては、「終電についたんだね。みんなはどこに行ったのかな」とその先を描かせたくなるような言葉をかけていました。

しかし、太郎君に対しては、そのやり方でも人の絵を書こうとしません

太郎の成長

ある日、ほかの子が描いた絵がきっかけで、太郎君が元々田舎に住んでいたことを知ります。

それを知ったぼくは大田夫人に直談判して、太郎を河原に連れて行って絵を描かせることにしました。

川の中に入り、コイが泳いでいるのを見つけると、太郎の目は強い輝きを放ちます。子供らしさが少し表れてきたようです。

河原に行った日から太郎とぼくは少し仲良くなり、太郎も自分から絵を描こうとし始めますが、これまで大田夫人に指定されたものしか書いてこなかったので、何を書いていいか分かりません。

太郎は河原で見たコイを描きたいようでした。会話をするうちに太郎の中にあるものが何となく見えてきました。

絵の交換会

僕はある記事をみてコペンハーゲンに手紙を出すことに決めました。

その記事とは、小児マヒでずっと病院暮らしだった「キャル」が、退屈のあまり窓の外に手紙を投げ続け、その後その手紙に対して、何通もの返事が届いたという記事でした。

もともと海外の子供が描いた絵が欲しいと思っていたぼくは、これにインスピレーションを受け、自分の画塾の生徒が書いた絵とコペンハーゲンの子供が描いた絵を交換することを提案する文章を文部省あてに送り続けます。

3回目でようやく、コペンハーゲンから了承の手紙が届きました。

ただ、子どもの親に海外に送る作品だと伝えてしまうと、親が干渉し、子供に年齢を無視した塗り分けや成型を要求しそうだなとぼくは少し危惧していました。

大田社長からの呼び出し

そんな時、「大田社長」からよびだしがあります。

なんと彼はぼくとまったく同じ提案を文部省に送っていたようです。

しかしぼくのほうが1週間早く、同じようなイベントが2つあると子供も混乱するため、僕の連絡先を文部省が教えたとのことでした。

大田氏の提案は僕の活動を全国的な運動として広げようというものでした。

どうやら、絵の具会社の社長である大田氏は、その運動によって絵の具がより売れることを企んでいるようでした。

さらに賞金をつけると提案し、当初ぼくが危惧していた、親が干渉した作品が大量に生産されそうな予感がします。

大田社長はただのあくどい絵の具商なのでした。

また、太郎が全く人の絵を描かないということを彼に伝えますが、「絵はかけなくても大学はいける」と社長は言い返しました。

それを聞いてぼくはどうでもよくなり、大田氏がイベントを仕切っていくことを了承し、その場を後にします。

大田夫人から話を聞く

ぼくは大田氏では話にならないと、大田夫人から太郎君の話を聞くことにしました。

話しているうち、彼女は先妻に対する焦りを持っていて、太郎に対して善意でしつけをしていることが分かりましたが、若さや未経験さから過剰になってしまうそう。

夫人に太郎君が孤独であると伝えると、夫人は自分こそ孤独だとぼくに訴えかけてきます。

昔の大田社長

友人の山口から大田家についての話を聞くと、大田社長は事業に熱中し、妻子をほったらかしにして、前の奥さんは亡くなってしまったようです。

さらに、先妻がなくなった後も、太郎がいると邪魔だからと、自分の実家に預けたまま顧みようとしませんでした。

大田社長は現在の奥さんと結婚後も同じように仕事に熱中していたので、夫人はさっさと夫にあきらめをつけ、太郎を矯正することに神経を注いだようです。

しかし、太郎は彼女が孤独から自分のお世話をしていることを敏感にかぎつけ、心を閉ざしてしまいました。

夫人は妻としては孤独で、母親としては若すぎました。

太郎が面白い絵を描く

僕は自分の画塾の生徒に童話の挿絵を描かせることに尽力しました。

特にできるだけ子供自身に描かせることを意識しました。

もちろん太郎にもおなじように童話のお話をして、自ら絵を描くよう誘導しました。

ある日、太郎が僕の家を訪れ、自分が書いた童話の挿絵を見せてきます。

その絵の中に、ちょんまげでふんどしをつけた裸の男が、お城のお濠を歩いている絵がありました。

それは間違いなく、「皇帝の新しい着物」の挿絵でした。

(皇帝の新しい着物…ペテン師が皇帝に愚か者には見えない着物だと嘘をついて王様に高く売りつけ、王様は見えていないのに愚か者だと言われるのを恐れて、それを着て町を練り歩いたお話)

ぼくはそれをみて笑い死にそうになります。

ぼくは子供にこの童話のお話を話すとき、王様や宮殿など子供を絵本のイメージに押し込むのを恐れて、あえてその言葉をはなさず、大枠だけ話していました。

本当に伝えたいのは権力者の虚栄心と愚劣だったからです。

その結果、太郎はそれを大名というイメージでとらえ、オリジナリティを感じさせてくれたのでした。

加えて、太郎君は人物を描くことができるようになり、ぼくは彼の成長を感じます。

3.結末

児童画のコンクール作品の会場に呼ばれたぼくは、太郎が描いた絵を持っていきます。

児童画コンクールの優秀作品はどれも同じような陳腐なもので、その中にしれっと太郎の描いた絵を混ぜます。

太郎の絵を見た審査員たちは何かと理由をつけ絵をばかにします

大田社長はその絵が絵の具をたっぷり使っていたことから、とても満足そうでした。

審査員たちに対し、その絵を描いたのが太郎君、大田社長の息子だと宣言すると、審査員たちは気まずそうに去っていきます。

ぼくは太郎君の絵を見たときと同じように高笑いします。

4.感想

登場する大人たちはみんな自分のことしか考えておらず、金儲け、孤独、名誉ばかりにとらわれていました。

そんな大人たちは、まったく周りの子供たちのことを顧みておらず、ぼくはそんな大人たちに対して嘲笑しています。

このあたりが開高健さんらしい作品だと感じました。

ほかにもパニック巨人と玩具もおなじように世間に対して、皮肉っぽく大人たちの醜い姿を表現されています。

面白そうだと思った方はぜひこの2作品のネタバレ見てみてください!