【ネタバレ感想】「キャッチボール日和」「エビスくん」 著:重松清(しげまつ きよし)
2023/06/26
カテゴリー:小説
概要
このページでは文庫本「ナイフ」の中に収録されたお話、「キャッチボール日和」「エビスくん」のネタバレ感想をしています!
重松清さんの書かれた作品で、2つのお話はどちらもいじめがテーマとなった作品です。
「ナイフ」に収録された「ワニとハブとひょうたん池で」「ナイフ」もいじめがテーマでそちらのネタバレ記事ありますので、是非そちらもご覧ください!!
ミキの住む町にワニが住み着いたとニュースが流れ、それと同時にミキはクラスでハブられるようになります。親友のホナミにも裏切られ、、、息子の真司がいじめられていると知った「私」は露店でちゃちなナイフを買い、駅前でたむろっている中学生たちに近づき、、、
目次
キャッチボール日和
登場人物
・小川…内筒と甲子園を目指した仲間。45歳で大輔の父。
・内藤…好美の父で交通事故で無くなる。
・大輔(だいすけ)…学校でいじめを受けている少年。好美と幼馴染。
・好美(よしみ)…大輔のいじめを傍観している。父親を若い頃に亡くした。
小川と内藤
小川と内藤は甲子園を目指したチームメイトで、大学卒業後に公団住宅で再会します。
2人とも結婚2年目で奥さん同士も仲良くなり、家族ぐるみの付き合いが始まります。
その年、甲子園で活躍した早稲田実業の荒木大輔を2人は応援していて、小川は息子に大輔、内藤は娘に好美(よしみ)と名付けます。
その後、好美の父は交通事故で死んでしまいます。
大輔のいじめ
好美の幼馴染、大輔は学校を14日連続で休んでいます。大輔は学校でいじめられていて、好美はそのいじめの見物客なのでした。
大輔のいじめはかなりひどいもので、パンツを脱がせたり、たばこダーツをされていて、「逃げてもいいじゃん」と好美は思っていました。
ある日、大輔とその両親が好美の家を訪ねてきます。明日から学校へ行かせると大輔の父は言っています。
見栄っ張りで負けず嫌いな大輔の父は、息子がいじめられて学校へ行けないなんて認めていないようでした。
大輔の担任の先生もいじめを知っていて、見て見ぬふりをしています。
父親代わり
大輔の父は好美にとって父親代わりで、小学校へ2人が入学した時に、グローブとバットを2人に買ってくれました。
当時から好美は自分はおまけで、大輔の父は大輔とキャッチボールがしたいんだろうなと思っていました。
一方の大輔はキャッチボールが苦手で父に叱られることも増え、グローブを持ってこなくなります。
父に命じられ、砂場のわきで腕立てやうさぎ跳びをさせられ、父はそれを気にせず、好美とキャッチボールをしています。
その時の気持ちはいじめを傍観している今の気持ちと似ているなと好美は感じます。
久しぶりの登校
9月27日の朝、大輔と大輔の父は一緒に学校へやってきます。
おじさんは険しい顔で教室を見渡しています。先生は昨日夜中の2時に無言電話を何十回も掛けた人に立つよう言います。
大輔の母は翌日高血圧で入院したんだそう。おじさんはいじめ実行部隊の1人、山崎くんの席の前へ行き、昨日おまえの声が聞こえたと言います。
おじさんは大輔にこいつの前で言ってやれと言いますが、大輔は震えて動きません。彼の目の下には大きなあざがあり、「もう逃げないって約束しただろう」とおじさんは問いかけます。
好美がおじさんに「もうやめて!」と叫んだ時、大輔は嘔吐します。
転校
おじさんはそれ以来毎晩飲みに出るようになり、おじさんと大輔との会話も減ったそう。
10月のある朝、大輔の机が片付けられていました。クラスのみんなは普段よりも会話がありません。皆後悔しているようです。
いじめの実行部隊たちはその日、殴り合いのけんかをしたそう。
好美が団地につくと、おじさんと偶然出会います。大輔は母の実家がある長野に転校するんだそう。
おじさんは好美があの時叫んでくれてうれしかったと大輔が言っていたと語ります。2人はキャッチボールをすることにします。
好美は「今度の荒木大輔の引退試合を大輔と見に言ったら?」と提案します。
おじさんは仕事があるからと断りますが、試合が延期となり、好美は電話で大輔を連れていくから今度の試合に来るようおじさんにいいました。
結末
長野から叔母さんを迎えにきた大輔を連れ出し、好美は試合の球場に向かいます。
大輔は今夜荷造りとか忙しいと渋りますが、無理やり球場へ連れていきました。好美は「おじさんが大輔に謝りたいんだって」と怒鳴り、大輔に野球のグローブを渡して長野にもっていくよう言います。
大輔と好美はおじさんを探しますが、スリーアウトまで投げ切り荒木大輔はマウンドを降りていきます。
その時、「次の回も投げろ!」という声が聞こえ、周りの観客からも拍手や歓声が起こります。声の主は大輔の父でした。
どうやら荒木大輔は次の回も投げるようです。好美はおじさんと大輔を残して球場を後にします。
エビスくん
登場人物
・ひろし…小6でゆうこの兄。
・ゆうこ…病弱で入院中。
・エビスくん…体格が大きな転校生。
・浜ちゃん…ひろしの親友。兄が暴走族で喧嘩が強い。
・吉田さん…ひろしが片思いしている女の子。
転校生のエビスくん
「ひろし」の妹の「ゆうこ」は入院していて、ぼくの先生は特別に自転車通学を許可してくれました。
先生はその代わり、新しく転校してくる「エビスくん」の世話をしてやるようお願いします。
ひろしはエビスくんに話しかけますが、鼻を鳴らして無視されます。
ひろしは学校終わりに妹の病院へお見舞いに行きます。妹にエビスくんの話をして、つい神様の子孫だと意地を張ってしまいます。
妹は神様の子孫なんだったら一度連れてきてほしいとお願いをします。ひろしは了承し、妹と約束をします。
次の日、学校へ投稿すると、エビスくんから頭をたたかれます。エビスくんは出席簿に書かれたエビスの漢字が間違っていると怒鳴り、蹴りを入れられます。
女子たちが悲鳴を上げ、浜ちゃんがひろしを助けようとしますが、エビスくんの右フックで浜ちゃんは吹っ飛んでいきました。
浜ちゃんは喧嘩が強く暴走族の兄がいて、ひろしとは幼馴染で仲良くしていました。
俺たち親友だよな?
ひろしが出席簿を見ると、エビスの字を書き間違えていました。先生がやってきて、エビスくんは「俺たち親友だよな?」と笑いかけてきます。
それからコンパスの針で突く真似をされたり、回し蹴りをされるようになります。エビスくんは母子家庭で父親はやくざだったらしいと噂が回ってきます。
浜ちゃんは喧嘩でやられてしまってから、エビスくんを完全に無視していました。妹のゆうこは早くエビスくんを連れてきてほしいとごねるようになりました。
半月がたってもエビスくんのいじめは続き、ひろしの体はあざだらけになりました。学校からの帰り道、泣きながら自転車をこぎます。
クラスのみんなは見ているだけで誰も助けてはくれません。
ある日、病院からの帰り道に浜ちゃんと出会います。どうやら待ち伏せをしていたようです。
浜ちゃんはひろしが怒らず笑ってるから助けないんだと言います。「もしひろしがエビスくんに文句を付けたならおれたちが守ってやる」と言ってくれました。
2人の衝突
10月になり運動会のシーズンが近づいてきて、帰ろうとするエビスくんを浜ちゃんが呼び止めます。
2人は口喧嘩となり、エビスくんと浜ちゃんはひろしに殴ってやれとお互いに言い合います。
吉田さんは会話をさえぎり、今日の練習に参加できない人は手を上げてと言います。浜ちゃんはにらみをきかせて手を上げさせないようにします。
吉田さんはひろしの妹の入院のことを知っていて、参加しなくても良いと言ってくれました。
浜ちゃんは「裏切りものとは口をきくな」といい、その日からひろしはエビスくん以外の男子の誰からも口をきいてもらえなくなります。
逃亡
ゆうこの容態が急変し、かすれ声でエビスくんはまだかと催促します。
ひろしは明日連れてくるとゆうこに約束します。日付が変わるころ、病院の待合室で作業服を着たままの父と話をします。
父は阪大病院へゆうこを移すかもしれないといいます。翌日学校へ行くと、吉田さんがクラスの女子を連れて、ひろしが無視されていることを先生に相談すると言ってきます。
隣にいた近藤さんは、ひろしの妹のために千羽鶴を折る計画を吉田さんが立てていると言った時、ひろしは吉田さんを突き飛ばします。
女子は悲鳴を上げて、罵倒し、ひろしは校門へ向かって走り出します。
ノックアウト
偶然エビスくんと出くわし、後ろを追いかけてきました。ひろしは目をつぶって拳を上に振り上げます。
それはエビスくんの顎にはまり、ノックアウトします。すぐ殴り返されると思いましたが、彼は後ろを黙ってついてきます。
防波堤の階段を上り、海に落ちる一歩手前に立ち、その場でジャンプします。エビスくんは落ちちまうぞと心配してくれています。
ランドセルの留め具が外れ、筆箱や教科書が海に落ちるのを見て、ひろしは恐怖を感じて降りれなくなります。それを察してひろしを持ち上げて下ろしてくれました。
エビスくんは「さっきのはまぐれだからな」といいます。ひろしは初めてエビスくんに妹の病気のことを言い、見舞いに行ってくれるよう頼みます。
ゆうこの手を握り、「大丈夫大丈夫」とえびすくんはいってくれました。ゆうこは寝ているようです。隣にいた母はゆうこがエビスくんに「ずっと友達でいたってな」と伝言を受けていたと語ります。
エビスくんは「僕たち親友です」と言ってくれました。帰り、エビスくんは自分の教科書をひろしに渡します。明日から転校するんだそう。
学校へ行くと、吉田さんたちが駆け寄ってきて、謝ってきます。浜ちゃんに余計なことするなと怒られたんだそう。
結末
エビスくんが転校した後、借金を踏み倒したなど様々な噂が流れます。ゆうこは阪大病院で手術を受けることとなり、新聞にも載ったことからたくさんの千羽鶴が集まります。
それから年月が経ち、30代半ばとなったクラスメートは同窓会を開きます。エビスくんは出席していないようです。
昔のクラス日誌を見ようということになり、見ているとエビスくんの字を間違えたときの日誌が出てきます。しかし、間違えたと言われた文字はひろしの書いたものではないようです。
どうやらエビスくんが自分で書き足したようです。みんな「あほやあいつ」と笑い合います。
まとめ感想
「キャッチボール日和」は、幼馴染がいじめられているのを見ている女の子、好美が主人公の物語です。
大輔は転校することとなり、そこでやっとクラスのいじめっ子たちは後悔することが出来たようです。大輔の父も後悔して謝ることができたかもしれません。
「エビスくん」では、転校してきたエビスくんにひろしはいじめられ、最終的にクラスのみんなから無視をされてしまいます。
偶然エビスくんをノックアウトし、妹の病気を話すことができて、エビスくんはお見舞いに行ってくれました。エビスくんはただみんなと仲良くしたかっただけなのかもしれませんね。
以上となります!当サイトでは同じ「ナイフ」に収録された「ワニとハブとひょうたん池で」「ナイフ」や、重松清さんの「みぞれ」などもネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!
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