【ネタバレ感想】「望郷波止場」「ひとしずく」 著:重松清(しげまつ きよし)

2022/04/18

カテゴリー:小説

波止場

概要

このページでは重松清さんの「望郷波止場」「ひとしずく」のネタバレ感想をしています!

この2作品は同じく重松清さんの「みぞれ」の文庫本に収録されています!

同じみぞれに収録されているお話のネタバレ記事もあるので良ければそちらもご覧ください!

目次

望郷波止場

登場人物

・わたし…ディレクターに昇格し、大学時代の後輩の林くんともに番組を担当する。

・林くん…帝国レコードに勤めていて、今回わたしと同じ番組を受け持つ。

・羽衣天女(はごろもあまめ)…昔歌手としてデビューしますが、その後飲み屋のママをしている。

・島田さん…プロヂューサーで、悪趣味だと非難を浴びながらも数字を残してきたプロ。

ディレクターの初仕事

大学のマスコミ研究会の先輩後輩で出会って以来、林くんと「わたし」は長い付き合いでした。

わたしはADとして番組制作会社に入社し、ついにディレクターに昇格しました。

林くんも帝国レコードでディレクターとなっていて、今回同じ番組の同じコーナーでデビューするのでした。

音楽バラエティ番組と銘打たれ、ヒット曲1発で消えた歌手を集めて歌ってもらい、ネタにしていじるという悪趣味な番組でした。

今回、「羽衣天女」(はごろもあまめ)さんの出演交渉をわたしと林くんがすることになります。

林くんにはバラエティ番組と伝えられておらず、真剣に歌手としてデビューさせようとしていました。

現在の天女さん

飲み屋のママをしている天女さんは、横幅が倍近く膨らみ、ただの飲み屋のおかみさんでした。

必死に説得しますが、もう歌う気はないようです。一度店を出て、お店が開いた夜8時くらいにまた訪れます。

中にはお客さんが3人いました。わたしはわざとテレビ出演の件で伺ったと大声で言い、お客さんを味方につけます。

天女さんは出演する気になったようです。背広を着たお客さんが去年だったらおばさんに見せてやれたのになと涙を流します。

おじさん3人組と天女さんはを流しました。

おじさん3人組と天女さん

どうやら3人と天女さんは小学校以来の幼馴染で、天女さんのお父さんは小1の時亡くなり、残った借金を返すためお母さんは働きづめだったんだそう。

おじさん3人組はそれ以来、天女さんを守っていました。歌手としてデビューしたのも三人のおかげで、ちびっこのど自慢へ天女さんが出演してスカウトされたんだと言います。

林くんはその話に感動し、「曲を邪魔しないでください」と私を見つめて言います。天女さんとおじさん3人組も音楽番組に出演すると思い込んでいました。

番組には出ない

プロデューサーの島田さんはセットの背景に昔の天女さんを映して、時の流れの残酷さを演出しようともくろんでいます。

彼は悪趣味やいじめを助長させると非難を浴びながらも、きっちり数字を残してきたプロなのでした。

本番前日の夕方に、天女さんの幼馴染のおじさんから電話がかかってきます。わたしは怒られる覚悟をします。

話を聞くと、林くんも音楽バラエティ番組と知り、番組には出ないと言っているそう。

天女さんは「そんなに世の中甘くないもんね」と苦笑いを浮かべます。どうやらプロデューサーの島田さんが来て、「はごろも、てんにょー!」とお笑い芸人と一緒にやってほしいと言ってきたそう。

林くんはそれを聞いて、島田さんにキレ、飛び出してきたと言います。

わたしは「番組に出てください」ともう一度お願いをしました。これで終わりにするのはなのでした。

結末

モニターの中で、天女さんは「はごろも、てんにょー!」とお笑い芸人と一緒に駆け回ります。司会もトークゲストも腹を抱えて笑っています。

その後おじさん3人組の中継に切り替わり、彼らは風呂敷をひらひらさせながら桟橋を「はごろも、てんにょー!」と駆け回っています。

天女さんはそれをみて嬉しそうに笑っています。ボサノバにリメイクされた「望郷波止場」を天女さんは歌い上げました。

島田さんは約束通り、歌の間は邪魔はしませんでした。その後島田さんを通して反響の電話や出演依頼が多数寄せられます。

しかし、羽衣天女はそれ以来テレビに出演しませんでした。

ひとしずく

登場人物

・ぼく…40代となり、妻の紀美子とは結婚15年目を迎える。

・紀美子…ぼくと同じく40代で、ぼくの妻。

・勝利さん…ぼくの妹の夫で、図々しい性格。

バースデーワイン

銀座のワインショップに初めて足を踏み入れ、妻の紀美子(きみこ)に送るワインを「ぼく」は探していました。

ワイン一本のために2万円も出すのは初めてで、店員さんにおすすめされた紀美子の生まれた年と同じ1962年のワインを買います。

ぼくと紀美子には子供がおらず、結婚して15年たっていたので、紀美子の誕生日を2人のお祝いにすることにしました。

紀美子からはいい値段のシャツを貰うことになっていたので、去年よりグレードを上げて良いワインを買おうと決めたのです。

勝利さん

次の日、昼食を兼ねてパーティーを開きます。まだ紀美子にはバースデーワインのことは伝えていません。

ケーキを出そうとしたとき、義理の弟勝利(かつとし)さんから電話が来ます。勝利さんはぼくの妹のダンナで年齢はぼくの方が上でしたが、建前上「さん」をつけているのでした。

彼の性格は図々しく、さん付け呼びを受け入れています。近くで息子二人のサッカーの試合があり、ぼくの家に寄っていくと言います。

ぼくが返事をする前に勝利さんは電話を切ってしまいました。

母と紀美子の関係

ぼくが勝利さんに強く言えない理由は、80歳の母が勝利さんの家で面倒を見ているせいもありました。

ぼくの母は紀美子が子供を産めなかったこともあり、あまり仲が良くないようです。勝利さんは家に息子たちと来て、お酒を飲みます。

勝利さんの息子たちはたこ焼きを取り合って喧嘩しています。たこ焼きが紀美子がプレゼントしてくれたシャツへと飛んでいきます。

ソースの染みが付き、ぼくは激しく怒ります。何とか怒りを鎮めますが、今度は勝利さんがワインはないかなと聞いてきます。

目ざとく、サイドボードにかけてあったバースデーワインを見つけ、勝利さんはワインをぐびぐび飲みます。

結末

古いワインはデカンタに移して、しばらく置かなければ渋いのに勝利さんは待ちきれずさらに飲みます。

残り少なくなって、ぼくも待ちきれず飲もうと手を伸ばしたとき、滑って床に散ってしまいました。

ぼくは勝利さんに怒鳴りつけ、出ていかせました。紀美子は「まいっちゃうよね」と笑い、残っていた1滴のワインを舌にのせます。

「おいしい」と紀美子は涙を流します。

まとめ感想

望郷波止場」では主人公の「わたし」が昔歌手だった「羽衣天女」さんに出演交渉するという話でした。幼馴染のおじさん3人組は昔と変わらず羽衣さんを笑わせてくれて、久しぶりのテレビ出演を応援してくれます。

仲良しの幼馴染っていいですよね。父親がおらず孤独だった天女さんを幼馴染3人はおじさんになっても守っているのがとても友情を感じました。

ひとしずく」では2人きりの誕生日パーティーに邪魔者の勝利(かつとし)さんがやってきます。彼は妻の紀美子のバースデーワインをがぶ飲みし、「ぼく」は彼を出ていかせました。

義理の関係の複雑さをとても感じました。義理とはいえ、元々は他人だとうまくいかないのも当然なのかもしれませんね。

以上となります!当サイトでは同じ「みぞれ」に収録されているお話もネタバレしてますので是非ご覧ください!SNSもフォローお願いします!!